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熊野の熱い夏
【フェチ/マニア 官能小説】

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熊野の熱い夏-5

「ミキ、やる気がないなら帰れ!」。バシッ! Tバックに絞ったミキの白く小さいお尻に、強烈な竹刀の一撃が飛んだ。バシッ! トモコも半泣き状態でお尻を強打された。塾長は一人ずつ10人の女の子のお尻を竹刀で叩き回った。それから威圧するかのように、私とカオリを交互に睨み付けた。私たちにリーダーシップをとれという合図だ。私とカオリは練白粉を水で溶いて、お互いの体に塗り始めた。でもみんなが動いてくれなければ意味がない。私はチラッとみんなの方を見た。ダメだ。まるで怯える羊の群れになってしまった。ミキちゃん、みんな、お願い! 今度はカオリを見た。カオリは私の目をじっと見て、小さく頭を振った。私にはカオリの気持ちが伝わった。そんな自信のない態度では誰もついてきてくれないわよ、カオリはそう言いたかったのだ。私が気を取り直して刷毛に練白粉をつけようとした瞬間だった。ミキがついに動いた。ミキは地面から刷毛と水の入った練白粉を拾うと、パートナーを目で探し始めた。それに呼応するように一人、また一人と動き出した。催眠術が解けたのだ。私はほっとしてカオリを見た。カオリは俯いたままこみ上げるものを必死にこらえていた。

 

 いよいよ公演まで10日を切った。まだまだやらなきゃいけないことが山ほどある。朝から日暮れまで体をいじめ抜き、練習が終われば塾長室に呼ばれ、グループの未熟さを叱責され、竹刀でお尻を叩かれる日々。だが一日はまだまだそれで終わらない。初めての合宿疲れでパフォーマンスが落ちている者には休養をとらせるよう塾長に進言しなければならない。進言は聞き入れられることもあれば却下されることもある。塾長は塾長で学生達のコンディションをみていたのだ。学生一人一人が到達した技術レベルもチェックする。渡された演目を演じきるだけの力が備わっているか、もし乖離があるなら、演出や振り付けの変更も提案する。有り体に言えば、アラは目立たないようにしないといけない。夜間の個別指導もしなければならない。深夜になっても煌々と点り続けるコテージの明かりに吸い寄せられる蛾のように、いつしかミキが現れチームに加わっていた。ミキは遅れている学生の個別指導に汗を流した。やがてトモコもやってきた。トモコは演出面で大胆な提案をした。他のメンバーも次々にやってきた。このコテージは深夜の作戦本部だ。もう私たちは戦う一つのチームになっていた。

 

 カオリと私にはもう一つやらなければいけないことがあった。ショーのクライマックスシーンの練習だ。最後のシーン、屈強な男性舞踊手がカオリと私を両脇に抱えて放り投げ、私たちはバク宙で着地する。ここが決まらなければすべて台無しだ。塾長がその舞踊手を紹介してくれた。「お前ら、バク宙は大丈夫なんだろうな」「あたし達は体操の元日本代表候補ですよ」。カオリがそう言うと、「あはは、相変わらず頼もしいな」。塾長はもうかなり私たちを信頼してくれていた。
「でもカオリ、大丈夫かな、二人一緒の空中放り投げなんて」。私は言った。「大丈夫よ。もうあたしたちガリガリで二人合わせても80キロもないんだから」「ほんと痩せたよねえ。でも汗で滑ってとか」「ジュンコはなんでそうマイナス思考なのよ。ここをバッチリ決めて、あの塾長をギャフンと言わしてやるんでしょ」。

 公演3日前、私たちは提案書を練り上げて塾長室に届けた。「お前ら、練習の後によくこんなもん作ったな」。塾長が少し嬉しそうに言った。「これは明日ゆっくり読ましてもらうから、今日は戻って早く寝ろ。お前らに倒れられたら公演になんねえだろ」「あたし達、そんなにヤワじゃないですよ、ねえジュンコ」「ああわかった、わかった。お休みな」。

 

 最後の練習は厳しいものだった。私のお尻にも、カオリやミキのお尻にも、何発もの竹刀が飛んできた。でもこれが最後だと思うと何だか淋しい気がする。常にプレッシャーをかけられ、ストレスをかけられ、それをはねのけていくことに闘志を燃やし続けるのが私たちの青春だった。だから私もカオリもこんなに燃えられたのだ。その私たちの熱い夏が、もうすぐ終わろうとしている。


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