エリザベス・悲劇の人形たちV-5
「安心なさい、壊したりはしないから」
「嬉シイ、嬉シイ」
安堵のエリザベス。
だが…
「その代わり、今までみたいな贅沢三昧はもう終わりよ。家財道具一切、処分して部屋自体を完全閉鎖するから。
お前を今後、どうするか今から決めるけどね」
「…」
エリザベスは何も言えなかった。
「ミャーミャー! ミャーミャー!」
キディがまだ、泣いている。
グロリアスはキディの足を掴んで、逆さまに吊り上げた。
「ビィービィー、ウルサいガキね!」
「降ロチテッ! 降ロチテッ! 降ロチテッ!」
手をバタバタさせるキディ。
「名前はキディって、言ってたわね? どんなコなの?」
グロリアスからの質問を受け、エリザベスはママとしての優しい表情を見せた。
キディについて、目を輝かせて自慢し始める。
30体の子供人形の中で唯一、甘えっ子で大の泣き虫。
でもとても、可愛い!
とにかく、可愛い!
ママの傍に、いつもいつも居るだけで皆の心が和む。
キディ自身は、とてもとても幸せ。
「私ノ、宝物。可愛イデショウ?」とまあ、エリザベスは笑顔笑顔。
グロリアスも笑顔笑顔である。
「可愛いはよネェ」と言って、グロリアスは近くの床に置いてあるバケツにキディを投げ入れた。
「キディ二、乱暴シナイデ! 大切二扱ウ!」
「アンタ、偉そうに誰に指図してんのよォッ!?
キディキディって…
イイ加減に、してくれなーい?」
グロリアスは戸棚からビンを取り出すと、中身の液体をキディに振りかけた。
マッチに火を付け、バケツの中へ投げ入れる。
ボオォォォーッ!
キディの体が炎に包まれる!
「ウギィアァァァッ!!」
火だるまとなり、バタ狂うキディ。
「キィィディィーッ!!」
エリザベスは狂ったように、悲鳴を上げた。
「ウギィアッ!! ウギィアッ!! ウギィアッ!!」
激しく暴れるキディ。
バケツがひっくり返って、キディは火だるま状態で転げ回る。