「午後の人妻 童貞嫐りC」-2
狭い車内を沈黙と緊張が支配した。
W橋を渡ってしばらく走ると、人家が途絶えて道はだらだら登りの坂になる。
峠というほどではない小高い丘だが、その登りきったところが隣り町との境だ。
その付近に2棟のラブホテルが建っていて、
いまそのホテルをめざしているのだった。
亨との待ち合わせ場所をW橋北詰めにしたのも、そこまで近かったからだ。
「今日の愛田さん、いつもの感じとちがいますね」
亨が唐突に口を切った。
あまりの緊張感に耐えられなくなって話しかけてきたようだ。
「一応、おめかししてきたのよ。
せっかくの亨クンとのデートなんだし、いつものコンビニに出勤するときの恰好では、ムードもだいなしでしょう」
由子は軽く応じて、亨にチラッと視線をやった。
「とても似合って、ステキです」
亨も見返して言った。
高校生の彼には精いっぱいのお世辞だろう。
ふたりは顔を見合わせて笑みをこぼした。
それでふたりのあいだがほぐれていき、いつもの親密な感じが戻ってきた。
この日の由子は濃いめのベージュの上着に、
ワインレッドのスカートという、
ツーピースの出で立ちで、
いま流にいえば勝負服であった。
亨のほうは学校帰りだから制服のままで、
グレーの背広型上着に紺色のネクタイをして、
それに紺色のスラックスというスタイルである。
彼のその恰好で、繁華な市中にあるホテルに出入りするのは無理がある。
やはり、車ごと入ってしまえる郊外のモーテル型ラブホテルを選んだのは賢明だったようだ。
そうこうするうちに、車はだらだら坂を登って、前方に2棟のラブホテルが見えてきた。
手前にあるホテル「E」は、おしゃれな外観のブティックホテルで、
奥のほうのモーテル「R」は、敷地に戸建てのコテージふうの建物を点在させたつくりになっている。
由子はモーテル「R」のほうを選んでいた。
そのほうが亨を連れてフロントを通らなくてすむからだ。
車のハンドルを大きく左に切ると、車はモーテル「R」の敷地に滑り込んでいった。
平日の午後とあって、空室のコテージが多い。
そんななかから1棟を選んで、そのガレージに車を進入させていた。
亨と連れ立って入ったコテージふうの室内は、
茶とグレーを基調にしたシックなつくりであった。
この種の部屋としてはケバケバしくなくて、好感のもてる配色だと由子は気に入った。