冷たい指・女教師小泉怜香 B-4
「………はあっ……」
頭を掠めた自分自身の妄想に身体が反応してしまい、私はそっと甘いため息を吐いた。
教師の身でありながら、生徒に対してこんなにも淫らな劣情を抱いてしまう自分が情けない。
だがその背徳感こそが、私のはしたない欲望に更なる拍車をかけているのかもしれなかった。
――その時、チャイムが鳴った。
「――じゃね。コーヒーごちそうさま」
亮は、パンの入っていた紙袋をくしゃくしゃっと丸めて立ち上がると、呆気なく保健室を出て行った。
いつものことだが、彼は自分がここにいたという痕跡をほとんど残さずに去っていく。
ゴミ一つでも必ず持ち帰る律儀さは、驚くほど徹底している。
だから亮が立ち去ったあとはいつも、「彼がここにいた」という事実さえ曖昧になってしまうような―――そんな悲しい錯覚が私を襲う。
まるで楽しい夢から突然覚めてしまったように、ひどく虚しい気分になってしまうのだ。
「……亮……」
私はついさっきまで彼が座っていた丸椅子にそっと腰を下ろしてみた。
座面に残っていた亮の温もりが、生々しくヒップに伝わってくる。
「……りょ…ぉ…」
私はきつく目を閉じて、亮の膝の上で背後から抱きかかえられている自分の姿を想像した。
『……センセ……エロい顔』
あの時電車の中で囁かれた言葉を思い出しながら、私は白衣の胸元をはだけてブラウスの上から自分の乳房をぎゅっとつかんだ。
「……あ…ああっ……」
せまい保健室の中に私の甘いため息が響き渡る。
数分前までたくさんの生徒の声でザワザワしていた中庭は嘘のようにシンと静まりかえり、どこかで微かに小鳥の鳴き声が聞こえていた。