冷たい指・女教師小泉怜香 B-3
「そうだ……亮のお弁当――よかったら私作ってあげようか」
今思いついたように言ったけれど、本当はずっと前から言いたかったセリフ。
……ウザいと思われないだろうか……高校生相手に大人が本気になっていると馬鹿にされないだろうか……。
そんな不安を抱きながら慎重に言葉を選んで、やっとの思いで私はその提案を口にした。
「あのー……ホラ、どうせ自分の作るから……一個も二個も同じだし……」
――なにをしどろもどろに言い訳してるんだか。
「うーん。嬉しいけど、センセーが特定の生徒だけに毎日弁当作って来るってのもマズイんじゃない?そんなの誰かにバレたらまた厄介だよ」
亮はこういう時、妙に大人びた冷静な判断をする。
私を痴漢から助けてくれた時もそうだった。
あの時あえて警察を呼ばずに、痴漢男にも周りの乗客にも私のことを姉だとごまかしてくれて、私はとても助かったのだ。
私が教師だということがバレてあれが大事になっていたら、私は今ごろこの学校の中で酷い噂を立てられて笑い者になっていただろうと思う。
「―――そ、そうだよね。つきあってるとか思われたら……こ…困るもんねぇ?」
「――でしょ?」
探るように言った私の言葉に、亮は何の迷いもなく即答する。
「―――だよね」
私は、たった今受けたばかりの胸の傷を隠しながら努めて明るく笑った。
そう―――。
私たちは教師と生徒。
あの日確かに私たちはセックスをしたけれど、亮にとってはそんなことは何の意味も持たないのだろう。
あの時彼が私にしたのは、単なる「消毒」という作業なのだ。
『セックスに意味なんてない』
あの日の亮の言葉が、何度も私の頭の中をリフレインしていた。
パンを食べ終え、机の上にあった私の蛍光ペンを片手でクルクルと玩びながらぼんやりと中庭を見つめる亮。
そのしなやかな指の動きが、私の心をひどく掻き乱す。
女性のような色白の肌。その指先はきっと今日もひんやりと冷たいに違いない。
あのすらりとした長く冷たい指が初めて私の中に滑り込んで、中を掻き回した瞬間の感触がリアルに蘇る。
膣の奥がきゅんと収縮して、身体の奥から蜜が溢れ出すのがわかった。
亮の指が器用にペンを回すたびに、微弱な電流のような性的欲求が私の身体を貫く。
その指で身体の隅々までまさぐられたい――――。