冷たい指・女教師小泉怜香 @-10
「……センセ…エロい顔……」
亮はあくまでも冷静に言いながら、私の「イイ」ところを執拗に攻め続ける。
『……この子…何なの?……私を助けてくれたんじゃないの……?』
頭の中を様々な疑問がぐるぐると回転していた。
その答えが何一つわからないまま私の身体はどんどん高みに押し上げられていく。
襲い掛かる快感に耐え切れず、口の中をぐねぐねと掻き回してくるひんやりした細い指に、私は夢中でむしゃぶりついていた。
身体の奥の締め付けがぐいぐい強くなり、頭が真っ白になる。
『……ああ…もう……』
逆らうのを諦め、気をやってしまおうと思ったその時―――不意に亮の手が止まった。
たまらないほどの空虚感が全身を包みこむ。
絶頂寸前で突然放置された私の肉体は、不完全燃焼のまま黒い煙をあげてくすぶっている。
「……やっぱヤメた……」
「……え?……」
意外な言葉に驚き、振り返って亮を見ると、彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべて悪戯っ子のような瞳で私を見ていた。
一瞬見せた意外なほど幼い表情が私の胸を鷲づかみにする。
これほど不埒な行為をされていながら、私は目の前の生意気な生徒に軽いときめきを感じてしまっていた。
やめないで欲しい……純粋にそう思った。
痴漢男への劣情とは微妙に違う感覚が私の中に芽生えている。
「……んな顔すんなよ……」
亮は意味深な笑みを浮かべると素早く私の着衣の乱れを直し、身体を離した。
気がつけば下車すべき駅に到着したところだった。
昨日と同じように平然とした態度で去っていく亮。
私はただ呆然とその後ろ姿を見送ることしかできなかった。
END