軟禁五日目―性欲、倒錯、異常な愛情-3
「嘘は言わない。此処から出るも出まいもお前の自由だ」
デミアンは繰り返すと、鋭い瞳でリーナスを見据える。
「……貴様は、何を企んでいる」
「企むなど、人聞きの悪い。俺は楽しみたいだけだよ」
訝るリーナスに、デミアンはそう答えて低く笑う。
そして彼女の手首を掴み、その顔に迫った。
「収容所監視部隊の長、デミアン・シュナイダー。デミアンと呼べ」
顔を捩るリーナスに、デミアンは喉の奥で笑う。
「いい顔だ」
言ってデミアンが片手でリーナスの右腕を捻り上げ、もう一方の手で頬を掴んだ。
こめかみの擦り傷に眼をやり、デミアンは言う。
「名前は」
「………」
リーナスは何も答えず、ただ男を睨みつけていた。
デミアンの瞳が一瞬だけ曇ったような気がした。
「あうッ」
「名前は」
ぎり、とリーナスを捻り上げる手に力を込め、デミアンは再び訊いた。
「………」
答えないリーナスに、更に力を入れた。
関節がぎしりと鳴る。あと少し力を入れれば、彼女の腕は折れてしまうだろう。
デミアンは感情なく言った。
「答えたくないならそれでいい。俺は今此処でお前の両腕を折り、両足を切り、お前を犯す。一切の抵抗もなく犯されたいというのなら、名前を言わなくてもいい」
「……ス……」
「聞こえん」
「リー……ナス……」
リーナスは苦痛に顔を歪めて言った。
満足気に口元を吊り上げ、デミアンは少しだけ力を緩めた。
「男のような名だ」
鼻で笑い、リーナスの身体を解放した。
「ッ」
解放されると同時に、リーナスはデミアンの顔に向かって拳を突き出した。
それを軽くかわすと同時に軍帽を脱ぎ、デミアンは突き出したリーナスの拳にその軍帽を引っ掛ける。
「!?」
そして素早くリーナスの背後に回ると、彼女の足を払った。
尻もちをつき、リーナスはデミアンを睨むように見上げる。
「思った以上にお前は楽しませてくれそうだな」
くくく、と笑うデミアンの表情は嗜虐的だった。
その笑いに、思わずリーナスは怯えた。
「どうした」
デミアンが屈み込み、リーナスの頬に手を這わせる。
――まただ。ぞくりとリーナスの背筋に何か冷たいものが走り、彼女は身を震わせた。
「抵抗しないのか」
デミアンの言葉にリーナスははっとし、自分の顔を這うその手を払いのける。
しかし、そんな抵抗など空しいものだった。
デミアンは彼女を押し倒し馬乗りになると、手首をがっちりと掴んだ。
びくともしない。リーナスは顔を歪めた。
デミアンはリーナスのこめかみに唇をつけた。投げ出され、擦り剥いて赤くなったこめかみを、男の舌が這う。
忘れていた痛みがじんじんと、そこを熱くさせた。