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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第三話-2

「おねえさんもその担当なんすか?」
おねえさん?
確かにこの男の方が少し歳下だったかもしれないが、
同年代の人にそんな事を言われた事はないので、少し違和感を感じる。
「…そうです。サカモトって言います。」
「...ワタシはフジモトす。もう知ってると思いますけど。」
そう言うと彼はぺこっと頭を下げた。
企画書通り、この人単体でみたら今風のルックスだが
着ている物や性格が古風でチグハグな感じだ。
話のマも、雰囲気も独特で、見ていて飽きない。
ただ、恋愛感情が湧くかと言ったら微妙なところ。
掴みどころがないというか、本当に今の時代の人間なのだろうか
というくらい、話していて違和感があるから。
「来週か再来週あたり、お店に伺いますのでよろしくお願いします。」
「へぇ。サカモトさんもいらっしゃるんですか?」
「私と電話をした美崎という担当の者で伺います。」
「…はぁ、何かわかりませんねぇ。」
「え?何がですか。」
「寝巻でメガネの格好のおねえさんとしか会った事ないすから。」
そうだ、自分が部屋着にメガネという事を忘れていた。
こんな格好で仕事の話してるなんて、恥ずかしい事この上ない。
結構話していた事を考えると、一気に顔が上気するのがわかる。
「すいません。何か、困らせちゃったみたいで。」
「えっいや、大丈夫です…。」
「おねえさん、お化粧とかしたらまた違うんでしょうね。」
彼は初めに会った時に見せた『猫のような笑顔』
で笑いかけてきた。
「じゃあ、おねえさんに会えるの、楽しみにしてますー。
お休みなさい。」
そう言って頭をかきながら軽く会釈すると、そそくさと変な小走りで
コンビニから出て行った。
私はしばらくその場で立ち尽くしていた。
会えるのを楽しみにしてるって事は、取材には良心的って事?
それとも私のオンオフが見れるのがって事なのか…。
後からオフの顔を見られるのも相当恥ずかしいが、
先にオフの状態で会ってからオンの顔で会う方が数倍恥ずかしい気がする。
そんな事を考えていたから、しばらく心此処にあらずの状態だったと思う。
気がつくと、頬の熱がひいているのがわかる。
まぁ、考え込むのは私らしくない。
今日はもう帰ろう。
結局コンビニに入ったが、ただフジモトさんと話しただけで出てきてしまった。
取材、ちょっと楽しみだな。
また彼に会いたい。
これは多分恋じゃないけど、気になって仕方が無い。
これから楽しくなりそうだ。
外に出ると、春の夜風が顔にあたって気持ちが良い。
私も彼の真似をして変な小走りで家に戻ることにした。


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