希望の愛-6
―そういえば小嶋さんがいない夕食ってのは初めてだな―
明日は1日部活があるので誰かと外食でもしようか。など考えてみる。お金は両親からこれでもかというぐらい送られてくるので少しぐらい外食しても余裕はあった。
しばらくして隣の部屋に人が入る音がした。そしてすぐ声が聞こえた。
「うん、大丈夫です。はい。はい。明日楽しみにしてます。では、また明日。おやすみなさい」
電話をしていたようだ。僕は聞いたことのないような声でしゃべっていた。僕は直感的にあの男が頭に浮かんだ。
―だからなんだよ。おれらは付き合ってるわけでもないんだし、誰と会おうと問題ないだろ―
それでも夜はなかなか寝付けなかった。
次の日の練習はなかなかハードでとても疲れた。みんなも同じようでクタクタになっていた。
「なぁ、今日飯いかないか?」
「無理………早く帰って寝てぇ」
「おれもパスだな」
「あ、米沢先輩。夕食どこか行きませんか?」
「最近予備校通い始めたんだよね……。一応受験あるからさ」
「そうですよね………」 こういう日に限って誰もつかまらない。家でもかまわないが、小嶋さんのことを考えてしまって窮屈なのでどこかへ行って気分転換したかった。
「ねぇ………」
「ん?」
「あたしと行かない?」 走り幅跳び専門の宮崎だった。
「え?おれと?」
「しかいないでしょ」
宮崎から言ってきたのに偉そうな口調で言った。
「なんだよ、愛先生の次は宮崎かよ。お前やっぱもてるねぇ」
「あーぁ。」
「んなんじゃねぇよ!」
小嶋さんとは違い宮崎とは一言二言お互いの競技について交わすくらいで飯に行くような仲ではない。
「ま、いいけど」
「そ」
言葉はそっけなかったが嬉しそうな表情をしていた。たしかに小嶋さんとは違い可愛い感じだなと改めて思った。
「………場所は?」
「あたしが決めていい?」「べつにいいけど」
「じゃあたしが案内するわ」
それからまた無言が始まった。
―なんでおれと行くなんて言い出したんだよ―
10分ぐらい無言で歩いて宮崎が立ち止まった。僕の家とは違う方向のようだ。
「ここ?」
「そうよ」
大人な雰囲気の店だった。
―高校生2人で入っちゃ場違いだろ―
ためらっていたが宮崎はとっとと入っていってしまったので急いであとに続いた。
店内は薄暗く予想通りとても浮いた感じだった。店員に案内され席につきメニューを見る。値段は大丈夫だったが、メニューがたくさんあり選ぶような元気はなかった。
「何にする?」
「んー、宮崎と一緒でいいや」
「わかった」
そういうと宮崎は注文した。また料理がくるまで沈黙だった。宮崎が頼んだのはスパゲッティにシーフードやら野菜やらが入ったやつだった。重いものでなく宮崎に心で感謝した。
食べていると宮崎が沈黙を破った。