想いのいきつく果て〜Final〜-1
「……え…今…なんて……言ったん?」
「…俺と別れて欲しい…」
頭の中が真っ白になった。今、向けられた言葉を理解出来ずにいる自分がいた。
「……な……んで…」
やっとのことで声を絞りだし問い掛ける。
「……ごめん……」
情けないくらい弱々しく謝る男……一度だって謝ったことなんかない…いつだって俺様な男だったしのじゃない……何がしのを変えたの……
ふと電話の女が頭をよぎる。
無意識に呟いていた。
「……ひろ……」
「!?」
しのの体がピクリと動いた。俯いた顔からも驚愕の表情が見てとれる………
やっぱり……
しのってこんなにわかりやすい男だったっけ……
『24』は不気味な笑みを浮かべながら体に触れてきたかと思うと、息苦しいほどしのの首に両手をまきつけて離れない。
「…しの…別れたりせえへんて言うたよね……」
「…ごめん…」
「…何で謝るん……あの女のため?…そんなにええの?」
しののシャツを掴みながら顔を近付け問い掛けた。
それでもしのの口が開く気配はない。
「………」
手をゆるめ、黙ったまま微動だにしないしのの顔を見据えた。
「………ええよ…別れてあげる…」
別れを口にした途端、初めて自分に向けられたしのの眼差し………自分があまりに哀れに思えてくる。
「…ほんまごめ…」
しのの言葉を遮るように条件をだした。
「その代わり……最後に抱いて……したら別れてあげる…」
しのの目が大きく見開かれ、驚愕の表情を浮かべたかと思うと、苦痛に満ちた表情へと変わっていく。
「……ごめん……できひん……」
頭は垂れ、握られた拳が震えている。
「…何で……しのらしくないやんか!そんなん出来るやろ!」
しのの胸を叩きながら泣き叫ぶ。
「……俺らしいって…なんや……」
顔をあげると無表情な…それでいて虚ろな目をした…そんなしのの顔が目の前にあった。