想いのいきつく果て〜Final〜-10
「ひろ…」
目の前にしのの影が落ちてきた。
煩いくらい高鳴る鼓動…
絡み合う眼差し…
触れ合う心音…
そして自然と重なる唇…
熱を持った柔らかな感触が心地よく身体中にいきわたる。
優しく唇を求め合う。
「紘子、大丈夫やで。もう何も心配することあらへん」
「しのくん?」
わけが分からず呆気に取られてる紘子の髪を撫でながら頭にキスを落とした。
「大丈夫。妊娠してなかったんや。彼氏もおったしな」
「…え…嘘…」
未だ戸惑いに満ちた顔の紘子の頬を摘んでみた。
「い、痛いっ」
顔を上げると意地悪そうに笑ってるしのの顔があった。
「嘘やないで。それに夢やない、ほっぺた痛かったやろ?」
「う、うん」
私を見つめ柔らかな笑みを浮かべるしの。
そんなしのの胸に今度は自分から飛び込んでいった。
背中にしっかりと回された腕。
触れ合った体からしのの熱が浸透してくる。
そして今まで胸につかえていたものが一気に流れ出ていった。
もう迷わないから
もう離れないから
ずっと傍にいるからね
溢れる涙で言葉にならない想いを心の中で何度も自分に誓った。
「あっ!」
「どしたん?」
『24』が妊娠してなかったら言おうと思ってた事、しのに伝えてないことを思い出した。
しのは両手で私の涙を拭って顔を覗きこんできた。
「あ、あのね……」
「ん?」
柔らかな笑みを浮かべ私の言葉を待つしの。
「私ね、離婚したの」
「!?」
私の言葉に、目を大きく見開き、驚きの表情を浮かべ言葉が出ない。
二人の間にどのくらいの沈黙が流れたのだろう、不意にしのが私を引き寄せた。
「しの…くん?」
顔をあげようとする私の頭を胸に押し付け、両腕を交差させる程きつく抱き締められた。