「午後の人妻 童貞嫐りA」-2
「あんっ……あぁ……」
この日初めて、はっきりとした声になって洩れた。
身体も少しだがうねった。
夫の両手が、
ふたつの乳房にかぶせられ、
ワシワシと、
揉みたてられはじめる。
揉みたてる指が、
弾力ある肉の膨らみにめり込んで、
乳房の形を変えていく。
身体の奥のほうに灯っている炎が、
少しずつ燃え盛っていくようだった。
それから夫は由子の身体を開かせて、布団の上に仰向けにさせた。
その乳房の谷間に彼の顔が埋め入ってくる。
夫はこうした愛撫を無言のまま淡々と行っていた。
それはこの日ばかりでなく、いつものことであった。
いったいに夫にとっては、前戯とか、愛撫は義務のようなものであったようだ。
だから、いつも判で押したように、同じ順番で、短い時間で展開されていた。
由子はそれに慣らされ、セックスとはそういうもので、男とはそういうせっかちな生き物だと思っていたのだ。
長いことそう信じていた。
ところが、最近になって、そんなセックスや男ばかりではないことを知った。
男性のなかには、
女性を歓ばせることを第一に考え、
前戯や愛撫に、
たっぷりと時間をかけ、
そのテクニックを駆使して、
女性を甘美なエクスタシーに導いてくれる人もいるという。
さらに、
本番セックスでは女性を幾度ものエクスタシーに誘(いざな)い、
クライマックスでは失神アクメにまで導いてくれる男性もいるようだ。
だが、
そんなことを夫には望むべくもなかった。
とにかく、彼は決まった手順で淡々と義務をこなし、なるべく早くペ○スを挿入して、己の欲望を満たすことが目的である。
それが由子にもあからさまに伝わってくるセックスだった。
由子は女性をめくるめく世界に導いてくれるセックスがあることを知ると、夫のセックスに不満をもつようになっていた。そんなおざなりでワンパターンのセックスではなく、もう少し思いやりのあるエクスタシーのもたらされるセックスをしてほしいと願った。
だが、
由子の性格から、
それを晋太郎に伝えて、
改めてもらうわけにはいかなかった。
それで変わりばえのしないセックスが、
唯々としてつづけられることになったのである。
ただ、その晩のセックスは、いつもとは少し様子がちがっていた。
いや、晋太郎はいつも通りの、彼のセックスの手順通りに、淡々と進めているだけである。
ちがっていたのは、由子のほうだった。