SFな彼女 -Sweet Face編--7
3. ふたりの告白
「――別に、信じなくてもいいけど」
「……信じられないけど、信じるわ」
榊の言葉に、俺は驚いたように顔を上げた。
あの後、俺は新しく買った温かい缶コーヒーを片手に、ユズリハのことを洗いざらいぶちまけてみた。
ユズリハが俺の家にやってきたこと、彼女が宇宙人だということ。もうすぐ星に帰ってしまうこと。
さすがに彼女と毎晩のようにヤッてましたってことはぼかしたが、そーいう関係にあることは気付いてるんだろうな。この前のこともあるし。
そう、あとはこの前のことにユズリハの能力が噛んでいたこともぶっちゃけた。
サイテーなんつってビンタ食らうのは覚悟だ。
もしかしたらボコボコに殴られて責任とれなんて言われるかもしれない。
しかし事情を知った榊の行動は、想像とはまったく違っていた。
奴の顔を覗き込むと、榊は微かに笑みを浮かべている。
「お、怒ってねーの?」
「そ、そりゃ、操られてあんなことしたなんて腹立つわよ!」
怒るに決まっている、と俺の言葉に榊は顔を赤くして声を荒げる。
それから息をつくと、コーヒー缶に口を付けた。
「それでも、それ以上に……今は、機会をくれて感謝してる」
榊は独りごちるように言った。それから俺の方を向いて、ふわりと笑う。
「気付いてなかったでしょ」
壁を背にふたり並んで腰を下ろし、コーヒーを啜る俺達。
榊は温かなコーヒーをちびちびと飲みながら言う。
疑問符を浮かべて残り少なになったコーヒー缶を揺らし、俺は言葉の続きを待つ。
「――ずっと梅本のことが気になってたこと」
「え……!?」
俺は再び驚きに目を丸くし、榊を見やった。
思わずぽつりと言葉を漏らす。
「ウソ」
「本当よ」
「いつから」
「一年の後期から」
「何で」
「……言わなきゃいけないわけ?」
俺の言葉に榊は顔を顰めた。
見慣れたこの表情――それも今となっては愛おしく感じる。
俺がこくこくと頷くと、榊は息をついた。
「一年生の後期、プレゼミの帰り――私、帰り道に気分が悪くなって歩道で休んでたの」
「……!」
榊の言葉に、俺はその時のことを思い出した。
そういえば杉山とプレゼミのガイダンスの帰り、確かに女の子を介抱したことがあった。
学校まで戻っても良かったが、既に保健室は閉まっているだろうし、俺の家の方が近いからと言って、その子を寝かせてやったのだった。
「梅本達が来て、私を背負って梅本の家まで連れて行ってくれて」
そうだった。
歩くのも辛そうで、俺か杉山かどちらかがおぶって行こうって話になったんだ。
「その時風邪引いてたのよね。風邪気味だったんだけど、四限までいたらさすがに気持ち悪くなっちゃって」
「あー……思い出した。ゲーゲー吐いてたよな、お前」
家に着いてからはひたすらその子の看病だった。
氷はねーわ風邪薬はねーわで、とにかく杉山に買い出しに行かせ、俺は洗面器片手に看てやっていた。
一日寝かせたらすっかり良くなったようで、そそくさと帰って行ったっけ。
ああそうか、だからこいつ俺の家を知っていたのか。
「……覚えてるの」
俺の言葉に、榊は恥ずかしげに俺を睨みつけた。
「覚えてる。けど、榊だってことは気付かなかった」
「気付かせなかったもの。学科が一緒とはいえ、ほとんど知らない男の家で高熱出して吐いて看病されて――ありがたかったけど恥ずかしくて、その後コンタクトから眼鏡に変えて髪もばっさり切ったのよ」
梅本にバレないように、と榊。
俺は僅かに眉根を寄せた。