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春に生まれた彼女へ
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今夜は、手を繋いで、眠ろう-4

「あの、朔さん、怒っていますか?」

「いや、怒ってないよ、しいて言えば…」

「しいていえば?」


「…弥勒いわく、嫉妬、いわゆるジェラシー?」

「……」

「…ぶふっ!…あははははははっ!」


そんなに可笑しいこと、言ったかな?
そう僕が、首を傾げている間、夕はまだ、クスクスと笑っていた。


「…」

「あ、す、すいません!だって、朔さん、怒ってるのかと思ったのに、すごく真面目な顔で、そんなこと言うから…それに…」

「それに?」

「朔さんが、俺っていう時は、ヤキモチを焼いた時も、なんだって」

「…も?他に言うときもあるんだ」

「あ、えと、いじわるな時と、か…」


夕は、何か思い出したのか、かあぁっと、顔を赤くした。





「…ね、夕」


夕の手を、クイッと引っ張って、頬に口づける。


「わわっ!さ、朔さん、ひと……!?」

そう慌てふためいている夕の口を、僕は、ふさいでやった。
人気も少なくなった、館内には、あまり人は見当たらない。
啄むように、何度も角度を変えて、彼女の唇に、深く口づける。

―お互いの熱を、分かち合うように。

そっと、離してやると、少し名残惜しそうに、夕は、僕を見る。


「いじわるな俺、嫌い?」



「…嫌いなわけ、ないじゃないですか」



少し顔赤らめて、目を潤ませながら、夕は呟く。
僕は、そんな夕が、愛しくて。
くすっと笑った。


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