電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―桜編―-2
「ストレートにローズジャムを落としても美味しいのです。ミルクティはもっと美味しいのですよー」
「クッキーがいいね↑ 美由貴お腹空いたなぁ*」
「なんかお菓子あったっけ?」
お菓子を探しに台所に行くと、じぃさまが難しい顔をして桜の枝を見ていた。
「……じぃさま? それ桜?」
「ん、ああ。ほら、四丁目の線路沿いの公園。あそこに一本デカい桜があるだろう」
頷く。あの桜には有名な噂があるのだ。
『卒業式の前の夜明けに、カップルの名前を彫ると必ず結ばれる』
そんな噂だ。まあどこの町にもありそうなロマンチックな噂話の一つである。
「道路拡張の関係でな、あの桜を移さないといかんのだが……どうもきな臭い」
「……〔現象〕?」
「わしの勘だが、おそらくな。工事作業員が相次いで負傷する事故を起こしてる」
よくありそうな怪談話、という感想は置いておく。〔現象〕絡みの事件には巻き込まれたくない。
「あー……そっか頑張って下さいじぃさま」
じぃさまは黙ったまま返事をしない。身内だが、美由貴とは全く別のベクトルで絡みづらい人間だ。
もっと社交性に富んだ、自分が気を使わなくてもいい友人なり家族が欲しいとちょっと思った。
そんなことを考えたせいだろうか。天使と巫女が離ればなれになってしまうのは。