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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―桜編―-3

「ふわぁ。平和なのですよー」
「…………」
「真琴真琴、何か喋って下さいよー」
(不審者に間違えられるからやだ)
 真琴とプクトは茶葉と菓子の材料を買いに街に出てきた。真琴もプクトの影響で紙パックの紅茶では満足出来なくなってしまい、安くても茶葉からミネラルウォーターを使って煎れるようになった。折角だから、神社の綺麗な桜を使った桜香る紅茶とシンプルなクッキーなんかを作ろうと思う。
 茶葉に関してはプクトの方が拘りがあるので連れてきたが、不可視の姿をとってもらう。言うまでもなく目立つからだが、このまま話すと空気と話しているように見えてしまう。不審者扱いで職質を受けるのは美由貴だけで充分だ。
「あれ? あの二人は……」
 こちらが気付くと同時、あちらもこちらに気付いた。
「あ、小林さん?」
「仲町先輩? 倉本先輩も」
 仲町彩花〈なかまちあやか〉と倉本佳奈〈くらもとかな〉。三年と二年で真琴の先輩に当たる。色々あって佳奈の方は美由貴などの事情を知っているのだが、最近は殆ど会ってなかった。
「お久しぶりですね。今日はどうしたんですか?」
「先輩がもう卒業だから。今日はね、演劇部のパーティだったの」
 佳奈が簡単に説明する。クールで人を寄せ付けない雰囲気があり、初対面の印象もあって正直真琴は苦手だった。
「あれ、じゃあアキは?」
「バイトで先に帰ったわ。そう、それで。変な話が出たんですよね」
「そう、桜に消えるカップルの話」
 桜に、消える?
(なんか穏やかじゃないですねー)
(アタシが聞いた噂とは違うけど、多分同じ桜だよね?)
 戸惑う真琴をよそに、二人は勝手に話始める。
「先輩の友達がさ、その桜に消えたんだって」
「友達、っていうか……」
「仲町先輩の友達が、ですか?」
「……ん、いや。クラスメート、なんだけど」
 彩花の顔が微妙に赤い。なんだろう、と真琴が気付く前にプクトが勝手に喋る。
(ほぅほぅほぅ。彩花はその人が好きなのですねー)
(勝手に決めつけないの)
 反射的に叱るが、プクトの情報は絶対正しい。プクトの持つ能力、或いは性質は、知識や情報に関しては、信頼や信用の問題ではなく、絶対だ。
 プクトが断定するなら、彩花はそのクラスメートが好きなのだ。彩花本人すら気付いていなくても。
「でね、卒業式の前の夜明けに名前を書くとずっと結ばれるって、そういう噂もあったんだけど」
 佳奈はこちらのことも彩花のことも気にせず喋る。
「卒業式出なかったんだってさ、その人達」
「……それは、サボっただけじゃ」
「違うと思う……そういう人じゃなかったし」
 佳奈が“達”と複数形に対し、彩花は一人だけを話題にしている。カップルで行方不明なのだとしたら、彩花の心中は相当複雑だろう。
「でさ、まあそういうわけで。桜見に行ってみようかって話になったわけ」
「二人でですか?」
 二人ともそういう噂を信じるようには見えないが、
「クラスの代表で見に行くの」
 貧乏クジを引かされたようだ。佳奈はその付き添いなのだろう。ドライに見えて、実は義理堅い人だから。
(ついていきますか?)
 プクトが訊く。本当はイヤだが、噂やじぃさまの言っていたことが本当ならば。
 彼女達が〔現象〕に巻き込まれることの方が。真琴は嫌悪を通り越して、恐怖だ。
「アタシも行っていいですか?」
 頭で考えずに感情が口をついた。
 反対する理由は、誰にもない。


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