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初雪と朧月
【初恋 恋愛小説】

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-1

校舎前に植えられた桜が、俺ら新入生を歓迎するかのように咲き乱れていた。
中学を卒業した俺の新しい居場所"高校"
新しい仲間、共に同じ道に進んだ仲間。
むしろ、同じ進路を選択した奴どうし話の通じる仲間は増えたと言ってもいい。
仲間は増えた、自分の取った道にも不安は無い。
それでも、ふっとした瞬間に、ある1人の姿が見えなくなってしまった事が、何よりも心に引っかかる。

俺にとっては、
風よりも清々して、
月光よりも、
雪景色よりも、
何よりも綺麗に見えた…彼女の姿。

中学"卒業"が最後のチャンスだったのかも知れない。
だが、俺はそのチャンスを逃してしまった。
否、違う。
本当は、恐くてビビって逃げ出した。
チャンスは無かった訳じゃない。
友達以上への発展に期待し無かった訳じゃない。
…それでも俺は、"友達"でいる事を望んでしまった。

その結果が、男ばかりの工業高校入学。
こんな場所に、あの彼女が居るはずもない。

学校が終わり新しい友達と別れると、新しい帰宅路の途中に川沿いの桜並木があることに気が付いた。
足羽川桜並木と比べものにならない程ショボい桜並木だ。
そんなショボい並木でも縁に座り込めば、それ並に良い景色だった。

「こういう景色をアイツと見ていたかった」
そう呟かずにはいられなかった。
もう、戻る事のない桜の花弁が、
あるものは川に流れて、
あるものは宙を舞って、
散り散りになる様が、
どうにも心に重く引っかかる。


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