けんぽなし〜クスリ〜-4
ー……もうっ!!空なんか大っっっ嫌いっ!!あんなで彼女なんて出来るわけないじゃん!!もう行かないっ空がいるときに太一の家にはもう行かないからねーーー
「…もうちょっと優しくしないと瑞希に本当に嫌われるよ」
太一、ベッドへ寝ころんでいる空に言った。
「……ー何だよそれっ」
「空も好きなんだろ?瑞希の事」
「…んー……だってよー…反則だろーっあんなかわいくなってるなんて!!絶対反則だ!!…ん?…も…って何だよ?お前彼女いるんだろ?チャットのっ何にも出来ない彼女がーー」
「あんなのウソだよ」
「は?」
「…瑞希さー…俺が引きこもったのは自分のせいだって、思ってるから…これで好きなんて…気にするだろ?」
「…だよなー…瑞希が耕太郎好きなのはみえみえだしな」
「…耕太郎も瑞希の事好きなんだと思うんだけどなー…」
「あいつなー…くそーっあんな顔した瑞希置いて行くなよなー…ああぁぁ〜ムカつくっ」
「耕太郎と彼女って長いの?」
「いや…卒業の時からだから1ヶ月くらいだよ…でもあいつ続かねーからな〜…」
「へ〜…」
「…まぁ、外出ないお前より俺のが確率高けーよな」
「バカにするなよ…瑞希は小学校の時俺があげたドングリ、お守りにしてるんだぜ」
「なっ…何!?」
空、飛び起きる。
「俺が上?」
「ふざけるなーーっドングリがなんだーー」
空、太一の首を締め上げる。
そんな事が起こってるなんて…
私は何も知らず、空に腹を立てながら、円の事を…悶々と考えていた…
日曜日…
久々に街に出た。
ー…あ、鯛焼き美味しそう…買って、太一のとこ行こうかな〜……
私、出しかけた財布を急いでバックの奥に押し込んだ。
ー…いやっ…アイツがいる…絶対いる…やめとこう…
私の頭に薄ら笑いを浮かべる空の姿が浮かぶ…
ーああ〜…怖い……ん?あれ?…
向かいの道に見えた姿…
ー円?
私、ドングリを握りしめ、急いで後を追う。
「ー円っ…」
「!!っ…瑞希?…」
振り返った円、私の名前を口にして…
ーあっ…え…
私に背を向け、そのまま走り去ってしまった。
ー円?…何で…何で逃げるの?…
ドクンードクンー
私、ドングリを握り締めたまま、立ち尽くしていた…
太一の家に向かおうとしたが、空がいるかと思うと…足が重くて、どうしても向かえず…
家に着いた私は、太一へメールした。
「ねーちゃんどけよっ座れないだろ〜」
ソファーに寝転ぶ私を押しのけるのは…
中2の弟、泰造(たいぞう)だ。
「臭っちょっとシャワーくらい浴びてきてよー」
「ん?男の勲章!!」
そう言って泰造は私に抱きついた。
「ぎゃーーー」
「…そう言えば、太一君、最近部屋から出てきてみんなでご飯食べるし、よく喋るようになったって春菜喜んでたよ」
泰造、私を離すと、コーラを飲みながらテレビをつける。