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密心
【ファンタジー 官能小説】

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密心〜あいまみえ〜-1

触れられない

あれ以来誰の温かさも知らないままでいる

ただの触れ合いすらできぬようになった

誰も触れられない
なぜか肌に触れられることを体が受け付けないようになって、……しまった

誰かが触れようとすれば息が荒くなり呼吸が乱れ、震えが止まらなくなる


あの日感じた肌の焼ける音、叩かれて響く熱、踏みつけられ滲む視界
折檻の痛み……
はりつめた精神がぼろぼろにすりきれ、びりびりとやぶられそうな心地が一気に襲うようになった


あぁ……これじゃあ売り物なぞにはならないだろう

自分はどこまでみそっかすなのだろう


口に出さずとも女将は手をこまねいてるに違いないだろう


始めは体を拭われるときだった
触れられた瞬間、避けてしまった
触れられれば、逃げ出したいほどの衝動にかられた
触れられるたび、体からは汗が玉のように吹き出して止まなかった

「すみんせん……わちきでやりんす」

終いには自分で痛む体に鞭を打ち、体を拭いた

幸いなことに切り傷はあまりなく毒の類いも試されていなかったのがよかった

これならば痣さえ引けば早くにも治ることだろう

……それまでに触れられるのに平気にならねば

「みそか……?」
「金魚姐さん……?」
「悪いね、こんなときに。あぁ…!起きなくて、よい、から……具合はどうでありんす?」

起こしかけた私の体に手を伸ばした姐さんがふいに気づいたように手を引く

触れたらまた……発作が…おきてしまうからだ

「牡丹姐さん、機嫌悪ぅて……憂いてございんす。みそかのこと心配してるのは……わかってさしあげてくだしゃんせ」

「心配かけて……すみんせん」

いたたまれずそう呟けば、金魚姐さんはいつもは快活な顔を苦々しく歪められた

「……みそか、あんたまだ自分がわかってないのかぇ?」

「金魚姐さん…?」

「みそかのみそかは、……みそっかすのみそかじゃのぅございんすぇ!!密やか密か(みそか)なれどいつか花咲けと牡丹姐さんがつけた花名を……どうして、あんたは自分を大事にしないの……っ!もうみそっかすなんて誰も思っておられんせん!!」

……私の、花名は密かのみそか?

みそっかすじゃ…、ない?

みそか密かに大事にされてきたのに……どうして気づけなかったんだろう

例え支えにと掴んだ恋が実らずとも私にはこんなに優しい姐さん方がいるのに

どうして気づけなかったの……みそか


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