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密心
【ファンタジー 官能小説】

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密心〜ぼたんあめ〜-3

―ふいに見下ろした自身は魚のように青紫に痣で肌を染めていた

きっと顔も酷かろう

……他人事のようにそう思った


「堪忍、堪忍…みそか……こないなってるなんて思わんかったんよ……堪忍、みそか」

お国言葉に戻るほど取り乱した牡丹姐さんは化粧も構わず泣きじゃくった
花魁が取り乱す

そちらの様の方が今の私なぞより余程辛いことのように感じた

「牡丹花魁が、…気に病むことありんせん。旦那さまも、……みそかが耐え性もなく、…至らずすみんせん」

そう笑うと牡丹花魁は私の頬を叩かれた

「みそかのあほう!」

悲鳴のように叫び、綺麗な着物を翻し牡丹花魁は襖の向こうへ消えてしまった

……色んなものをなくした心地がする

今更ながらに震えている指先を、自覚した

肌ならず体全てが痛くてたまらない

でもどうでもよい
もうどうでもよい


襖の向こうですすり泣く幾人かの声も
震え続けて感覚のない体も
異様な様に痣で満ちた醜い体も

――もうどうでもよい


今は何も考えたくない

目を瞑れば地獄絵図が浮かんで汗にまみれた


こわい
くるしい
つらい
たすけて
誰かたすけて

――目すら閉じられない


いざ醜くなればすがる何かが欲しくてたまらない

でも今さらに思う

私はすがり方を知らない

助けを求める方法を知らない

いつも蔵ノ介さままかせで促されるままに夢中にしたことばかりで、何も思い出せない



蜜花世の格子からぼたぼたと落ちる雨雫は、蔵ノ介さまのくださった飴玉にも……牡丹姐さんの瞳にも似ていた


格子から透け淡く光が落ちているのが畳みに照らされる光でわかっても、雨雲の隙間は……私にはみえない

光は、私には、みえない


見開いた瞳からは、ぼとりと牡丹飴ほどの雫が流れ、頬を生暖かく伝った


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