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Summer〜君がくれたもの〜
【青春 恋愛小説】

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Summer〜君がくれたもの〜[咲弥編]-2

『離別・空虚』
 廻っている。意識がはっきりしない。そのせいで、自分自身が廻っているのか、周りが廻っているのかがわからない。しかし、廻っていた。

※「バカ・・・」

誰・・・だ?自分の捕らえた言葉も、頭の中で回転している。とにかく、意識を閉じたかった。しかし

誰かが。何かが俺の意識を現世に縛りつけている。

※「貴方は・・・まだ・・・」

そこは不思議と居心地がよかった。頭の回転感にさえ慣れてしまえば。そこは不思議と温かかった。温度という概念はないと思われるのに。そこは不思議と悲しかった。理由もわからず、悲しかった。





 目が覚めた。頭が痛い。足も痛い。手も痛い。全身が痛かった。でも、不思議と苦痛はなかった。妙に頭がはっきりしていた。だから、自分の置かれている状況もしっかりと把握できた。

 病院特有の匂い。そして、自分がここにいる理由。枕が濡れていた。自分の涙で。涙は止まらなかった。確信があったから。亜季とはもう会えない。信じたくはなかったけど。確信していた。





 そこから先は早かった。俺は全身打撲ってことで、数日入院した。奇跡的ってことだけど、俺は少しも嬉しくなかった。この程度ですんでいることを恨めしくすら思った。

退院してすぐに亜季の葬儀があった。俺は体を引きずって赴いた。亜季の霊前で、なんて言っていいかわからず、ただ謝っていただけだった。何を謝るのか。俺にはわからなかった。

日々が流れていった。始業式。なにもかわらぬ日常。ただあの声が聞こえなかった。俺は部活にも顔を出さないようになった。ただ、流れていく時間。

そんなんだから、成績も下がっていった。ただのんびりボーッっとしていることが多くなっていた。時の流れに身を任せて。ただ流されていた。





和輝「なぁ。悠木」

 屋上。空を見るのが好きになっていた。いつの間にか隣に居た友達にも視線を向けるがすぐにまた空を仰ぐ。

和輝「・・・。いいのか?」

 何を言ってるのかもわかってる。何が言いたいのかもわかってる。コイツだって、ホントは怒鳴って怒りたいような所なのに、俺を気遣ってくれている。

悠木「・・・・。わからん」

和輝「まぁ、わからんでもないけどさ」

悠木「時間が解決してくれるって思ってたけど。そうもいかないもんだな」

和輝「少なくても、俺にはなにもできん。自分でどうにか出来ないなら他人に寄りかかればいいさ。俺以外のな」

 微笑むコイツは、はっきり言ってキショイ(少なくても男にとっては)。

悠木「お前に心配されるなんてな。ってか、お前男のことも考えられたんだな」

和輝「たまにはな・・・・」

悠木「何人ものダチにそう言われたよ。全員男だった。亜季が生きてれば、多分そう言ってくれると思う。やっぱり、俺にとって亜季は特別だった。友達とか、彼女とか。そういうんじゃなくてさ」

 初めて。亜季の名前が口から出た。

和輝「少しは時間が解決してくれることもあるみたいだな」


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