シアワセサガシ-6
─♪ー♪♪…
ビクンと体が跳ねた。
家のチャイムが鳴ったのだ。
私はインターホンの受話器を取った。
「…はい」
『あ、奏!俺俺!開けてー』
受話器越しでもうるさいくらい大きな声の大聖だった。
鍵を外しても入ってこない。おかしいなと思ってドアを開けると、ラップの掛かった大皿を持った大聖が目を輝かせて立っていた。
どうりで開けられないはずだ。
「焼きそば作ったんだけど作り過ぎちゃったから一緒食べよ!お袋さんどうせいないだろうし、奏もまだ食べてないだろ?おじゃましまーす!」
作り過ぎたって、一人分をどう間違えば四人分程も作れるんだろう。
大聖はズカズカと家の中に入るとリビングのテーブルに大皿をどんと置いた。
「あー、重かった。さ、冷めない内に食べよ食べよ」
「あ、うん。ちょっと待ってね」
私がお皿を用意しようとすると
「あー奏、いらない。このままでいいよ。洗い物増えちゃうだろ」
一人暮らしの男って感じだな、なんて思いながら箸を二膳持っていった。
大聖は小さい頃、事故で両親を亡くしていた。
親戚の人に引き取られたらしいが、高校に入ってから私の家の近くで一人暮らしをしている。
なので、極たまにこうやって家に転がり込む時があった。
そんなことがあったなんて、想像も付かないようなウキウキした笑顔の大聖の横顔を私は暫く見つめていたようで
「奏、何やってんの!」
ラップを剥がして早く早く、と私を急かす。
焦げたソースの香りで、私は空腹だということを思い出した。
「はい、大聖の」
「ありがと。じゃ、いっただっきまーす!」
「いただきます」
私達はほぼ同時に焼きそばを口に運んだ。
「うん、おいしっ」
「だろ!だてに一人暮らししてないもんね」
「そうだね」
久しぶりに食べた焼きそばは本当に美味しかった。
一枚の大皿からつつき合って食べるのもなかなか悪くない。