卒業〜ある二人-3
「近すぎたんだ。きっと」
愛し合うということはお互いの距離を縮めることと同義だ。
だが、どこまで近付いても一緒にはなれない。その時の最も近い距離が、俺達には無かった。
最初から、ゼロだったんだ。
彼女は口を開いては閉じ、四度目の開口でようやく言葉を出した。
そうだね。と。
身を翻したアイツを追う術はない。なんと声を掛けていいのかも考えられなかった。
彼女に会うことは、もしかしたらもう無いのかもしれない。これが、最後のチャンスなのかもしれない。
「おい」
雪は、その足をさらに強めて。まるであの時と同じだった。
呼び止めた彼女の顔からは、何も読み取れなくて。
その顔で気付いた。
俺達は、もう一緒にはならないだろうと。
「……じゃあな」
「じゃあね」
そう返すと、彼女は去っていった。
距離は離れてしまったけど、ようやく、俺達はお互いを卒業したのかもしれない。
ジッポを見る。心地よい重量のそれを、思い切り振りかぶって遠くへ投げた。
踵を返す。
今度は、お互い成長した姿で会えたらいいな。
雪は、止んでいた。