SFな彼女 -Sullen Face編--1
なあ、おい。いつもの仏頂面はどうしたっつーの!
SFな彼女 -Sullen Face編-
1. いらっしゃいませ
それは、一月も半ばの寒い日の午後だった。
学校の講義は終了し、長い春休みに突入したその日。
俺――梅本正樹(ウメモトマサキ)は早速真昼間からビール片手にAV鑑賞を楽しんでいた。
傍らには、ひょんなことで俺の家に居候することになった宇宙人ユズリハの姿。
彼女もまたビールを飲みながら、あられもない姿で喘ぐAV女優に釘づけになっていた。
そんな時だった。
ピンポーン。
突然のチャイム。俺は首を傾げる。
(新聞勧誘か?)
リモコンを手に取ってテレビの電源を切り、俺はあくびを噛みころして立ち上がる。
何も言わずにテレビを消したことで、ユズリハが少しむっとした表情を浮かべるのに苦笑し、俺は言った。
「ちょっと待っててくれ」
そう言っている間に、もう一度チャイムが鳴った。
せっかちな野郎だな、なんて苛立ちながら扉を開ける。
それと同時にゴツ、という鈍い音。
「げッ」
チャイムを鳴らしたその人物は、扉のすぐ前に立っていたらしい。
俺が開けた扉に思い切り額をぶつけてしまったようで、そいつはその場に蹲ってしまう。
(つーか、そんなドアの近くに立ってるなっつーの!)
俺はAV鑑賞を中断させられて苛立っていた。
そんなことを思いながら、額をさするそいつの顔を見て――俺は再び苦い顔を浮かべる。
「……榊」
そこにいたのは、銀フレームの眼鏡をかけた仏頂面。大学のゼミ仲間である、榊楓(サカキカエデ)だった。
仲間、とは言っても俺自身はほとんどゼミに参加していない。
おまけにこいつと俺とはまったくもってそりが合わない。
だから何故おれの家にこいつが現れたのか、てんで理解することができなかった。
いつものパンツスーツではなく、カジュアルなデニムとジャケット姿の榊は、額をさすりながら言う。
「……わざと?」
「なわけねえだろ」
俺は舌打ちまじりに、苛立ちを抑えず言った。
「何しに来たんだよ」
「メール、送ったわよ。見なかったの?」
榊の言葉に俺は首を傾げる。
メール――? そういや昨日から携帯見てない。
榊はため息をついてから、鞄の中から薄いファイルを取り出した。
「あんた昨日ゼミ出なかったけど、来期もゼミを取るのに届けが必要なのよ」
「あ……」
しまった。忘れていた。
「梅本だけ届けがないって教授に言われたから、こうして書類を届けにきたわけ」
言いながら、榊はA4のプリントをファイルごと俺に手渡す。
俺はそれを受け取りながら、少しバツが悪そうに頭を掻いた。
「桂ゼミの杉山にでも、頼めばよかったのに」
「……適当な人間がつかまらなかったのよ」
榊はそう言って俯いた。痛むのか、額に手のひらを当てて。
「悪かったな」
俺は言って、扉を広く開けた。
「……どーぞ。デコの手当てくらいしてやるよ」