春を告ぐ-2
あのときの自分を殴り倒してやりたい
彼女は強い
店長の前では泣いた素振りも見せず、明るく快活に店長のこだわりを受け入れながら様々な案を見せていった
それはなんて健気なんだろう
彼女は春みたいだって柄にもなく思ってしまう自分がいる
「じゃあハルくん、私も仕事終わりだから。もうバイバイだね」
――バイトファイト!
そう返す紗英さんの手を気づけばつかんでいた、離したくなかった
「おーい、ハルくん?」
「――好きです」
口に出した瞬間、ぽかんとした顔をする紗英さんを見ながら、俺はずっとそう思っていたのか、とどこかで納得した
今まで自分でもこの感情に名前がつけられなくて理解すらできなかった。
「――好きです」
あなたが好きです
春のようなに人に恋をした
ぽかんとした顔をするままの紗英さんに顔を近づけてささやかなキスを瞼に送った
どうかこの気持ちを受け取って
今この胸に満ちる憧れはきっと恋だから
どうか受け取って
あなたのように頑張りたいんです
あなたの頑張る姿をいちばん近くでみたいんです
どうかこの憧れに似た恋心を受け取って
春を知りたいんです
あなたを知りたいんです
もっと、もっと――