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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃-1

鈴(りん)がいなくなって、ずいぶん経った…
季節は変わっていき、最近では、暖かい風が吹きはじめていた。


俺、矮助(あいすけ)は、あれから毎日鈴を探している。

『女の子みたいな顔をした、小柄な少年を見ませんでしたか?』
『手足は細いんですけど、剣は強くて…』

こんなセリフ、一体何度口にしただろう…

鈴へ繋がる手がかりは、何もなかった……


『なぁ、もうここにはいないんじゃないか?』
一緒に捜してくれている友人、弥一が言う。

『そんなはずはない!
絶対、この街のどこかにいる!!』
そう言って、俺は先を歩く。

この街、大笑(おおえ)はこの国の中心部だ。
だから、北と東と南にある関所は厳重な警備をしている。
鈴らしき人物が通ったという情報は得られていないし、いくら鈴でも、警備の目を盗んで出ていくのは無理だろう。
西は海に面していて、貿易が盛んだ。
密航者や密輸品がないか、ここも警備が厳しい。
また、ここに近寄れるのは、ごく限られた人間だ。
普段見慣れない人物が通れば、皆すぐに気付くだろうが、ここからも、鈴らしき人物を見たという情報は得られなかった…

この街から出て行ってないのなら、今もまだ、この街にいるのだろう!


後ろにいる弥一が、何か言いかけてため息をついたのがわかった。

「諦めろ」

そう言いたかったのだと思う。


鈴が俺の護衛をしていたとき、鈴は俺以外の人と会っていない。
鈴はいつも部屋にいて、あまり部屋から出なかった。
食事や身の回りのことは、いつも俺が間に入っていたから、鈴が家の人と直接会うことはなかった。

普段は男装している鈴が一度だけ、女物の着物を着て俺と出掛け、ある女の子に会ったことがある。
その女の子は、俺が鈴と一緒にいたことを覚えていないという。
それに、例え覚えていたとしても、俺が捜しているのは普段の、男装している鈴だから
「お前が捜しているのは、男と女、どっちなんだ!?」
なんて聞かれたら、どう説明したらいいか困ってしまう…

そんな訳で、俺以外、誰も鈴を見ていない。

だから、俺は周りから
キツネに化かされただの
頭がおかしくなっただの
色々言われている。


俺自身、時々不安になる…

[鈴]は本当にいたのだろうか?
俺の思い込みではないだろうか?
俺は、永い夢を見ていたのでは…

そんなとき、俺は懐からあるものを取り出す。
それは、鈴に渡そうと思っていた、かんざし。
赤やピンクの小さな玉がいくつも付いていて、揺らすとシャラシャラと音が鳴る。
渡そうと思い、鈴の部屋に行ったら、鈴はいなかった…


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