【私のビョーキ】-11
生理現象なのはしょうがない。私だってたまにいらいらするし、変に男の人の股間を見たりもする。
けど、やっぱり嫌だ。
私の裸を想像されてオチ○チンを扱くアッキーなんて嫌い。
彼は何もしていなかったと言うけど、そのうちに覚えるわ。女の子の私でも男の子がどうするのか知っているし、ダメといっても我慢できるはずも無いのだし。
あーあ、私のアッキーが……やだな……。
私はカップに残った氷を呷ると、がりがりと噛み砕いて飲み込んだ。
***−−−***
転校数週間たってからのズル休みをしていた分を取り戻すべく、放課後も図書館を利用して自主的に補習をした。掃除も塾に行く子に代わりせっせとこなし、担任の歓心を誘う。もちろん口やかましい同級生は「点数稼ぎ」と陰口を叩くがキニシナイ。
だって、少しでも時間を潰す口実がほしいもん。
けれど、アッキーは私の小細工を見抜いてしまう。
「ユッキー、最近来てくれないね。どうして?」
ブランコをこぎながら、アッキーが呟く。
「それは、だって、私も受験生だもん」
私は作り置きしていた答えをお口のレンジで暖めなおす。
「受験かあ。……もしかしてユッキーは違う県の高校狙ってたりしない?」
アッキーは突然妙なことを言い出す。嬉々とした態度は不思議だったけど、残念ながら期待される答えを返してあげられない。
私が狙っているのはバスケットボールに力を入れている高校。丁度よく全国制覇の経験のある強豪校からのお誘いもあって、多分そこに行くと思う。
「しないよ。どうして?」
「そっか、じゃあいいや」
「なんでよ。変なアッキー」
変なのは私も一緒。たかが成長しているだけの男の子に一喜一憂してるんだもん。
「ねえユッキー」
「なに? アッキー」
ブランコがキィと音を立てて止まる。くさりを握るアッキーの手は痛いほどに赤くなっている。
「俺ね……」
地面をけっていた足をそわそわさせて、俯いていた顔をこっちに向ける。
「うん」
まっすぐな瞳は純真な子供そのもの。
「言わないといけないことがある……」
なのに、続く言葉はきっと、おそらく、多分……。
「そうだ、喉渇かない? 私ジュース買ってくるから、アッキーはコーラでいいよね」
逃げるなんて格好悪い。
けど、今は聞きたくなかった。