thoroughbred-3
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労せずして桃絵さんの連絡先を手に入れることができた俺だが、これは桃絵さんの連絡を待っていいのだろうか。
帰宅した俺は上着を脱ぎながらそんなことを考えていた。
いや、せっかくだしメールを送っておこう。
そう考えて携帯に手を伸ばした瞬間、偶然にも桃絵さんからのメールで携帯が鳴った。
『今日はありがとう。乗馬の件は近いうち連絡するね』
久しぶりに受信する女性からのメールにうれしくなって急いで返信した。
『こちらこそ。はい、待ってます』
送り返した後に、なんだか素っ気ない返事をしてしまったと後悔した俺がいた。
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桃絵さんからの連絡は意外に早かった。
翌日の朝メールがきたのだ。
『おはよう。今度の日曜日なんてどうかな?』
夜遅くまで予定を考えてくれていたんだろうか、と勝手な妄想で俺は喜ぶ。
『わかりました。待ち合わせ場所はどこにしますか?』
すぐにメールが返ってくる。
『じゃあ駅の南口に9時でいいかな』
意外と早い時間なんだな。
『わかりました。楽しみにしてます。』
『うん。またね』
メールを終えると、俺はすぐに大学の準備を始めた。
俺はすでに桃絵さんに惹かれ始めていた。
年上は好きだし、普段の大人っぽいイメージと昨夜見せたあの愛くるしい笑顔のギャップがとても魅力的に感じたのだ。
とにかく日曜日が楽しみでしょうがない。
ようやく俺にも運が向いてきたのだ。
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ついにデート当日を迎えた。
生憎の雨模様だったが、桃絵さんに訊いたところ支障はないらしい。
もしかしたら屋内でやるのかもしれない。
勿論乗馬なんて初めてだし、ここはインターネットなんかで詳しく調べておくべきだっただろうが、俺はあえて乗馬の知識を前もって得るのはやめた。
桃絵さんにいろいろと尋ねながら体験したほうが話も弾むしいい方向に進むと考えたのだ。
前回の合コンで少々恥ずかしい思いをしたのもあって、今回はいろいろとシミュレーションしておいた。
そんなこんなで妄想を最大限に膨らませたまま待ち合わせ場所に到着すると、すでに桃絵さんは待っていた。
早速予定外なことが起きてしまったため、少々焦る。
まだ待ち合わせの30分前だからだ。
まさか待たせることになるとは思わず、俺は慌てて桃絵さんの元へ駆け寄った。
「お待たせしてすいません」
別の方向を向いていた桃絵さんに声をかけると、桃絵さんは俺の顔を見て小さく微笑んだ。
「んーん、今きたところだよ」
俺は思わず、うわあ、と声を出しそうになった。
デートの待ち合わせでは定番の台詞。
それを女の子が言ってくれるのは初めてで、思わず感動してしまったのだ。
「この日を楽しみにしてたから、我慢できなくてつい早くきちゃった」
「!」
そう言って屈託なく笑った桃絵さんはとても可愛かった。
「では行きますか」
「はい」
俺は桃絵さんに先導されながら、駅の中に入っていった。
そして俺は気付くことになる。