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thoroughbred
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thoroughbred-2

そんなこんなで乾杯を済ませると、それからはフリートークの時間になる。
横目で友人達を見ると、それぞれ向かいの子と趣味や身の回りの話題で盛り上がっているようだった。

向かいに座る桃絵さんはずっと黙っているし、なんだか他の男に負けている気がして悔しいので質問を始めた。
「桃絵さんは好きな芸能人とかいます?」
我ながらくだらない質問をぶつけた。
「芸能人は特にいないけど…スポーツ選手なら」
よかった、普通に反応してくれた。
それは合コンに参加している以上、普通のことだとは思ったが、なんだか大人っぽいオーラが強くて不安になってしまった。
「へえ、なんて人ですか?」
「…石田太郎」
「…」
まずい…知らない。
何のスポーツか先に訊くべきだった。
今訊いてもいいが、もし超有名なスポーツ選手だったら恥ずかしいから訊くに訊けない…
仕方なく次の質問に移る。
「あの、桃絵さんは趣味とかありますか?」
桃絵さんは少し考えた後、小さな声で言った。
「……乗馬、かな」
「乗馬!?」
俺の知っている中で乗馬が趣味なんて人間はいないので、つい大きなリアクションをとってしまう。
「すごいですね、乗馬なんて」
もしかしたらすごいお金持ちなのかもしれない。
俺には乗馬なんてセレブ御用達のイメージしかない。
「…乗馬って言っても見るほうなんだけどね」
なぜか桃絵さんは自嘲じみた笑いを見せる。
「…へ?」
見る乗馬なんてあるのか?
全く話題がかみ合わない。
こうなったら奥の手だ。いや、奥の手と言うより苦し紛れと言ったほうが正しいかもしれないが。
「でも、俺も乗馬って興味あるなあ」
こうするしかないでしょ。
「本当?」
「…え?」
するとなぜか、桃絵さんは急に目を輝かせた。
「うれしいな」
「…はは」
桃絵さんが初めて笑顔を見せてくれた。
少し顔を赤くして笑う桃絵さんは、なんだかすごく可愛い。
「ねえ、今度一緒に行かない?」
それは思いがけない言葉だった。
「乗馬、ですか?」
「うん」
そう言って、桃絵さんは俺の手をぎゅっと握ってきた。
最初はなんだか大人しくて話しかけ辛かった桃絵さんだが、今は笑顔で楽しそうな表情を見せてくれる。
それがなんだかうれしくなって、乗馬のことを何もわからないくせに、俺も笑顔でこう言っていた。

喜んで!と。


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