reality ability‐第8話‐刻印・【真】‐-2
「これは“創壊(そうかい)詠唱”で作った。零歌を‥“無限の無”を一時的に封印した。」
箱の形状したモノは一定のリズムで光り輝いていた。激しくなったり穏やかになったりもした。零歌の感情や心臓の動きを現しているようだった。
「‥俺たちの会話は聞こえない。“これ”を解放出来るのは俺だけだ。‥‥‥。」
皇希は織音を見る。織音は零歌を見るように箱形のモノを見た。そして、喋る。
「‥‥‥。なんでも解るしなんでも出来る皇は私に何を求めているの?」
織音は答えを必死に求めている表情で皇希に問い掛けた。
「‥‥‥。それは言えない。今はそれよりも織音にある【真実】を伝える事が先だ。」
皇希は話題を変えるように言った。逃げているのか、それとも‥‥。
「‥‥‥。逃げたわね。皇。いつも‥いつも‥そうやって逃げては無かった事にしている。」
織音は今すぐにも涙を流しそうな表情と涙声で皇希に言った。
「‥‥‥」
皇希は視線を逸らし黙りこんだ。考えているようだ。織音は睨み付ける。皇希を愛し憎むように。再度言うが二人は恋人ではない。
だが、二人の雰囲気はまるで恋人の喧嘩のようだ。そう、織音が皇希に攻撃的な発言をし皇希は何もしないで無抵抗の状態。織音の一方的な喧嘩。
皇希は視線を織音に戻した。そして、口を開く。決意を固くしたようだ。
「‥織音。俺は─────」
‐同時刻、集神城の会議室‐
絢音、司樹菜、螺樹、凰輝が椅子に座っている。他の部屋の三つ分ぐらいの大きさがあった。四人には充分過ぎる広さだ。
どこにでもあるはずの学校や会社特有の長方形の机もあり、この部屋の雰囲気を作っていた。
「司樹菜さん?何を怯えているの?そんなに私の事が嫌いかしら?」
突然、絢音は笑顔で言った。司樹菜はビクッと体を動かし顔を絢音に向けた。その顔は驚きを隠せない表情だった。
凰輝は目を閉じていて両腕を組んでいる。螺樹はどうすればいいのか解らないようだ。
「‥‥‥。」
司樹菜は無言で顔を逸らす。いや、逸らさないと絢音の許しているような、憎んでいるような笑顔で体や‥心が持たないのだ。
「‥‥。まぁ、私は貴女方とは違う“世界”の神。違う考え方かもしれない。」
絢音は顔を見せないように陰を作るように伏せた。凰輝はチラッと横目で見たが何もせずに寡黙を突き通した。
「‥‥“無神” 絢音様?」
螺樹が話題を逸らしたいように言う。無神を強調した声が絢音を黙らす事が出来なかったが、司樹菜を助ける事は出来たようだ。
・無神(ムガミが一般的。ナガミと言う神もいる)・
=織音や螺樹、司樹菜が皇希と絢音に対して呼び名で呼ぶ時に使う。この呼び名は運命神である天神家と知詠神のみしか知らないので、一般的な全知全能神は使わない。
意味は“神”ではないである。しかし、螺樹は皇希と絢音が“本当の意味で神”と思っているらしい。=
絢音は顔を逸らしている司樹菜を見るのを止めて、顔を螺樹に向けた。