未完成恋愛シンドローム - 目覚め --3
―トットットットッ
「用意出来たー?」
「まだ・・・・ちょい待ち」
玄関で待っていた和葉に断りを入れ、洗面所へと歩いて行く。
「ふぅ・・・」
顔を洗い、化粧台の鏡を見る。
濡れた顔がそこにある。
そのまま歯を磨きながら、手櫛で髪を整えていく。
「んー・・・・」
口を濯いでタオルで顔を拭く。
「・・・・あれ?」
鏡をよく見ると、アホ毛が一本立っている。
「・・・」
取り敢えず無言で引っ張ってみる。
直らない。
「・・ワックスワックス」
ドア状になっている鏡を開け、ワックスを探す。
「あれ?」
ない。
「っかしいな・・・・あ」
―忘れてた。
そう言えばこないだ切れたんだった。
「・・・・」
しょうがないので少し指先を水で濡らし、アホ毛を寝かせてからドライヤーをかける。
「よし。OK」
洗面所を出て荷物を取り、そのまま玄関へ。
「お待たせ。・・和葉?」
「んぁ・・」
「・・・・・」
どうやら座ったまま寝たらしい。
―つかこの短時間で寝れるって、どんだけだこいつ・・・。
「ほら、行くで」
「んー」
まだダルそうにしながらも、立ち上がる和葉。
「あれ?」
「ん?」
靴を履きながら、一つ気付いた。
「カイトは?」
カイトの靴がない。
「ボク来た時にはもういなかったみたいだよ?」
「・・・・・」
―早いな。
「なんか用事でもあった?」
「いや別にないけど・・・」
・・・・。
―あれ?
そう言えばあいつ、昨日帰って来てたか?
「どしたの?」
和葉が聞いてくる。
「・・・いや、なんでもない」
そう言って、玄関の鍵を閉めた。
・・・・・。
「これ、伊吹ちゃんが休んでた時のノート」
「センキュー。・・じゃなくて、なんで今渡すねん」
登校途中。
いきなり和葉がノートを差し出して来た。
―どうもさっきからリュックん中ガサガサ漁ってると思ったら・・。
「ありがたいいけど、今渡されても困んねんけど」
「なんで?」
・・・。
「別にえーけど」
空気の読めない子になにを言っても仕方がないと思い直す。
「・・なんかバカにされた気がする」
「・・・・」
エスパーか。
「感謝はしてるよ」
試行錯誤しながら、なんとかリュックにノートを入れる。
「あ」
「あ?」
―今度はなんだ・・・。
「昼休みまでにはノート返してね?」
・・・・。
「まぁえーけど。なんで?」
一応聞いてみる。
「小太郎くんにも見せてあげなきゃなんないから」
・・・・・。