トースト・トースト-10
「ほんとほんと、あたし達くらいしか貰う人がいないんだもんねー!」
「お前らな……」
そこまで言われるとさすがに腹が立ってくる。
口元を引き攣らせるエイジの肩を、常連の老人が叩いた。
「可哀想な奴だな、お前。誕生日なんだろ、飯でも奢ってやろうか」
そこまで同情されると、何だか虚しくなってくる。
エイジは苦笑いを浮かべた。
「いや」
奢りというのは万年金欠のエイジにはありがたい話だが、彼は小さく首を横に振った。
「今日は遠慮しとく」
そう言って、エイジは隣の席に置いた紙袋を手にしてみせる。
「何だ、その紙袋? ラムベイク・ベーカリーの一斤袋じゃねえか」
意外そうに老人が言った。
ラムベイク・ベーカリーは、シティウエストサイドのショッピングモールに店を構える、老舗のベーカリーだ。
たかが食パン、されど食パン――丁寧な作りとその美味さに、行列ができるほどの店である。
「食パンなんて、どうすんの?」
「何って、食うんだよ」
極上のプレーンなパンにつけるのは、もちろん極上の――。
エイジは答え、にっと歯を見せて笑った。
「俺のご馳走なんだ」