けんぽなし〜再開〜-8
「うあああああぁぁぁーーーーー」
泣き叫ぶ太一の声が私の体を引き裂くようだ…
2人は組み合ったまま…動かない…
「うあああああぁぁぁーーーーー」
太一は、何度も何度も声をあげる…
この3年間の全てを発散するかのように…
「うあああああぁぁぁーーーーー」
どれくらい経っただろうか…
太一がその場に崩れるように座り込んだ…
「ああぁぁぁーーーーー…」
そして…うずくまり、泣き叫ぶ…
「立てよっ…立てよ!!立てよっ!!…自分の足でっ自分の力で立てよ!!」
耕太郎は一歩も動かず、太一を、ただ、見下ろしている…
「…………」
「立てよ太一!!ちゃんと立て!!」
無言になった太一のせいで、雨の打ちつける音が耳にまとわりつく…
太一は、あの狭い世界の中で、何をみてきたのだろうか…
何を考え、その孤独を過ごしたのか…
太一の時間は、ちゃんと進んでいるのだろうか…
私は、漠然とそんなことを考えていた。
バシっー…バシっー…
太一は、うつむいたまま地面をたたき始めた。
バシっー…バシっー…
水をはじく音と、雨の音でかき消されていたけれど、かすかに聞こえていた…
太一の小さな泣き声が…
太一の手が止まり…
突然…
太一がゆっくり…立ち上がった…
太一は上を向いて、空を見た。
雨が止まることなく落ちてくるのに、太一は目をしっかり開け、いつまでも…
そして…
ポツリとつぶやく…
「雨……久しぶり……」
私と耕太郎も空を見上げ、雨を眺めた…
灰色の空から絶え間なく落ちてくる水滴…
こんな風に雨を眺めるのは初めてだ。
目に当たる雨粒が心地よく、私はゆっくり瞼を下ろす…
頬に温かなものが流れ落ちて行った。…
シャワーを浴び、太一のお母さんが作ったココアを前に私達は向かいあっていた…
沈黙が続く…
その沈黙を破ったのは…太一だった…