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けんぽなし
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けんぽなし〜再開〜-9

「…何か…変な感じ…」

太一の顔は穏やかで…
だからだろうか、私の口から自然と言葉が出ていた…

「…太一…ごめんなさい…私…」
「違うんだよ瑞希…」
私の言葉を遮る太一…
「…あの日…俺…あの日死のうと思ってたんだ…」

ーえ…

「あの日さ…昼休みに、……‘お前は家畜だから服なんかいらないだろ’…って…裸で立たされてて…」

ー…………

「ひどっ!!…」
耕太郎が荒々しくココアをテーブルへ置いた…

「だから…もう死のうと思ったのっ…でもさ…瑞希の後ろ姿見てたらさ…ああ〜…瑞希をこうして見るのも最期なんだーって…そう思っちゃって…そしたら死ねなかった…遺書を書いてても瑞希の後ろ姿が浮かんできて…」

私の目から…また、涙がこぼれる…

だからといって…私の罪は、許されるものではない…
あの日、太一に背を向けた私は、太一をいじめた彼らと…同じだから…

「………」

言葉が出てこない…

「…瑞希…」
ドキッー

耕太郎が私の頭を優しくなでる…

「…長期戦でいくつもりだったのにな…」
耕太郎、私の頭に手を置いたまま、太一にそう言った。

「え…長期戦?…あれが…?」
太一、耕太郎をにらみつける。
「あ…いや…だから、その予定だったんだけど…瑞希の涙見たら何かカーッとしてさ…」
ーえ……え……
「…あ〜…そ…」
太一、ソファーに深く座り直し、ココアを一気に飲み干した…
「…戸を壊してしまって…すみません!!」

耕太郎、立ち上がり、太一に深く頭を下げる。
私の頭に手を置いたまま…

ー…も…もうダメ…

感覚全てが頭に集まっていくようだ…
涙も止まり、体全体が心臓になったかのように、ドクドクと鼓動を繰り返す。

「……も…大丈夫…だから…」

しどろもどろになりながら、どうにか耕太郎の手を耕太郎の元へ戻した…

「…本当に?大丈夫?」
ー!!っ
耕太郎、私の顔を覗き込む…
ーヒーーー…も…もう…もう…

「…同じ高校なの?…」
太一、私達を見比べる。

「ビックリだろ〜」
耕太郎、腰を下ろしながらそう言った。

ー……た…助かった……

外はまだ雨が降り続いていた…どんよりとして…

厚い雲で覆われた空を見ていたら…
ふと、頭に浮かんだ、保育園の私たちの姿が…

「…みんな…何してるのかな…?……会いたいよね…みんなで…」

私、ポツリとつぶやいた…

私達の空間に、また雨音だけが響き始めた


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