レッド・レッド・レッド-34
――命があれば、それでいいさ。
サイファ博士はそう言って、壊れたラボを見回して肩を竦めた。
「でも、本当に大丈夫なのか?」
「もしまた襲ってきたなら、針山にでも落としてやるから大丈夫だよ」
そう言って笑う博士。
此処にいれば、いずれまたローゼンロットは博士を襲うだろう。
エイジとダナは博士がこの場を去るか、あるいは自分達が博士のボディガードになると申し出たが、博士はそれを断った。
「彼女達がまたすぐに襲ってくるとは限らんよ。わしは蔵とラボを離れるわけにはいかんが、それで君達の自由を拘束するのは忍びない」
「でも……」
「何、わしもこの状況を楽しんでいるのだよ。どうやって彼女達を撃退するか、トラップを考えるのにワクワクするさ」
博士はそう言って、エイジの肩を叩いた。
何と逞しい、と皆は思わず舌を巻く。
「それじゃあ、博士」
ジャムが言って博士を握手を交わした。
「今度会う時には、おじいちゃんの話を聞かせて」
「ああ、聞かせてやるとも。君も酒の飲める歳になったろう。いつでも遊びに来なさい」
そうして抱擁を交わし、ジャムは博士に手を振った。
エイジ達は博士に地上に出る近道を教えてもらってから彼と別れると、ルーのバギーでディオニシスの都バッカスへと向かった。