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想いのいきつく果て
【女性向け 官能小説】

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想いのいきつく果て〜溢れる想い〜-3

「・・・それだけ?・・」
「え・・・うん・・だからごめんなさい!」

しのの手が緩んだかと思うと、しのの方を向かされた。
「ひろ、そんなしょうもないこと気にしてたん?」
「え・・・」

「紘子が何歳だろうが俺は目の前の紘子がええんやで?それに・・・実際10上には見えんし」
しのが悪戯っ子のように笑った。
緊張が解け安心した途端、我慢していた涙が次から次へと流れてくる。
「うぅ・・・」

「紘子・・もう泣かんとって」

しのの暖かいおっきな手が私の涙を拭って瞼にキスを落とした。

しのは私が泣き止むまで頭を撫でてくれていた。まるで子供をあやすように・・・

「紘子、そろそろ支度しとき、飛行機乗り遅れたらシャレにならんし・・」

「うん・・わかった」

すると、突然、テーブルの上に置いてある携帯が鳴りだした。

しのはディスプレイを見たまま出ようとしない。

携帯は鳴り止まない。

「しのくん?急ぎかもしれないよ?」
「・・24から・・・」
「?・・・24て・・・あ・・」

しのは私の前では決して2人の彼女たちの名前を呼ばない。『19』と『24』まるで背番号のように言う。

「・・彼女?・・」
しのは無言で頷く。

私の胸がチクリと痛んだ。携帯が鳴るまで彼女の存在自体忘れていたから。

それでも携帯は鳴り止まない。

「しのくん・・私シャワー浴びてくるね」
「ひろ!?」
しのの声を背中に聞きながら私はバスルームに逃げ込んだ。

『すっかり忘れてた、しのには彼女がちゃんといるんだった。私も人妻だし。私自惚れてた・・・』

涙が頬を伝わってくるのを何度もシャワーで流した。溢れる想いに歯止めをかけるように・・・


ホテルを出てから空港までの間、しのは一言も口をきかなかった。
しのの方を見ても、何か考えているようで、こっちから聞ける雰囲気じゃない。
搭乗手続きを済ませ、搭乗口で別れる瞬間・・・
しのは紘子の手を掴み、引き寄せた。

「・・・しの・・・くん?・・」
「・・紘子・・好きやで・・」
「・・うん・・」

しのが放ったたった一言で胸が熱くなる、切なくなる、涙が出そうになる。

しかし、無常にも別れる時間はやってくる。

しのは搭乗口に消えていく紘子の背中をずっと見続けていた。


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