Cure's CHOCOLATE-5
「え?」
それって。
「アタシ…?」
あんなにひどいこと言ったのに、静香さんはアタシを責めない。
「悲しいけど人って誰かを傷付けながら生きてくの。私は哲希を傷付けた。あなただって誰かを傷付けてるかも。でもね、きっと、それを癒してくれる誰かもいる…」
アタシは体の熱が冷めていくのを感じていた。
静香さんの言葉はやけに冷静で的確で、アタシなんかよりはるかに大人。
今更どうしようもなかったことなのに。
「何か…急にごめんなさい。アタシ思ったままで…イノシシみたいですいません…」
「いいの。それじゃあそろそろ行こうか」
「あのアタシ…。何でも無いです」
「なぁに?言っていいのよ」
「アタシは、哲希が大好きでした。好きになって行くんじゃなく、初めから最高潮でした」
アタシのどうでもいい告白に静香さんはニッコリ笑って頷いてくれた。
二人並んで店を出ると図ったかのように哲希が通りかかった。
変な声を出して驚いてたけどさすがマイダーリン。状況を察したみたいで、静香さんに「うちのコノ子がお世話になりました」と頭を下げた。
「行くぞ」
アタシも静香さんに頭を下げると、小走りで哲希についていった。
「コノのことだから大体想像つくけど…」
哲希はアタシの少し前を歩いている。だけど手は繋いでくれていた。
「…ごめんね」
「ったく」
分かってたけど、じっとしてらんなかったの。
「哲希、ちゃんと笑ってなかったから…」
なんとかしたかったんだもん。
「あのな、そりゃ久しぶりに会えばぎこちなくもなるだろ!」
…へ?
「静香のことはコノを好きになった時点で終わってんの。あぁ、そんな思い出もあったなぁ、ぐらいなんだよ。どんだけ深読みしたか知らないけど、コノが心配することねぇんだよっ」
「……てことは」
アタシの取り越し苦労!?
「そっかぁ…」
出たよ、アタシの得意技『早とちり』。
いろんな人に迷惑掛けて自己嫌悪です…。
「そんな落ち込むな。コノの気持ちは嬉しかったよ。ありがとな」
哲希がアタシの頭をポンポンと軽く撫でた。
これ、大好き。哲希の手、すんごく落ち着く。
哲希はどんなアタシでも受け止めてくれる。