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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-20

 頭に疑問符を浮かべながら身を起こす。
 そこは、高い壁に囲まれた空間だった。
 何かが衝突したような亀裂が壁の所々に走っている。
 その高い壁の先にはぽっかりと四角い夜空が見え、明るい月が覗いている。
 まるで、大きな井戸の底にいるような感覚だった。
「で、あんたは誰?」
 恐らくビルとビルの隙間であろうこの空間の確認が終わったところで、二つ目の疑問を口にする。
 ごちん。
「痛っ!」
 なぜかげんこつを喰らった。
「それはこっちのセリフだ!」
 意味が全く分からない。とりあえず、今までの経緯を確認してみよう。
 キョウとさくらとクイーンズに行って、高くて恐くて漏らしそうになる。
 そしたら窓から変な外人が飛び込んできて…。
「あ!」
 慌てて胸を抑える。しかし、そこには傷一つなく、肌もきれいなままだった。
「おかしいな…」
 まあともかく、その後窓から落下して…。
 って落下!? あの高さから落下!?
 その時の感覚がリアルに甦ってきて背筋が冷たくなる。
 落下して、ここに寝てたの? いや生きてるわけないし、いやいやそもそもここクイーンズじゃないし…。ちょっと待てよ、さくらは…。いやいや、キョウがいるから大丈夫か。もしかして夢か、あれ? いやいやいや、それにしてリアルで…。
「ていうか、あんた誰?」
 そしてこの疑問にたどり着く。
 ごつん
「あいてっ!」
 またまたゲンコツを喰らった。
「黙れ! シラジラしい」
 なぜか少女は物凄く怒っていた。
「貴様、寝ている私に何をした?」
 貞操の危機を訴えるように身を抱える少女。
「はあ? 何もしてないけど」
 ごっちーん
 特大のゲンコツが飛んで来た。
「痛いな! もう」
「黙れ! そんな格好をして何を言う」
 格好ってなんだよ、と思いつつ自分の服装を確認する。
「…」
 というか服装も何も、俺は真っ裸だった。
「…変態」
 軽蔑の視線を投げかけてくる少女。ふと気づくと少女は傷だらけで、着ている服の至る所が破けている。
 まるで俺が何かしたみたいだった。
「ち、違う! 何もしてない、天地神明に誓って何もしてない!」
 チカンで捕まる大学教授のような言いわけだった。
「っていうか、寒っ!」
「何を今更…」
 気づけば今は二月である。裸で外にいたら風邪を引く、前に死ぬレベルである。慌てて自分の服を探すもののどこにもなく、仕方なく落ちていた汚いダンボールを体に巻く。
「…名前は?」
 少女が胡散臭そうに俺を睨んで言う。
「帆村鉄也って言います…。善良な高校生です」
 今の俺が言うと善良という部分がやけに虚しく聞こえた。
「焔? ホムラキョウコの関係者か?」
 その時、少女の口から出た言葉は信じられないものだった。
「えっ、なんで母さんの名前を…」
「母だと?」
 少女の金色の目が驚いたように見開かれる。
 事実、少女は驚いていた。
史上最強の術師と言われたキョウコ。そのキョウコの息子のことは何度か聞かされていたが…。その息子がコレ?
 少女の目の前にはガクガク震えながら、辛うじて危ない所を隠す少年がいる。
「…一つ聞くが、お前の母は希代の術者か?」
「あんた、そんな事まで知ってるのか」
 残念なことに間違いないらしい。本当に残念だ。ものすごく残念だ。
 しかし、それなら少年が自分の前に現れたことに納得できる。目覚めた時、吸血鬼の気配は消えていた。このテツヤと名乗るこの少年が倒したのか…。
「…その過程で服が脱げて裸に、なるわけないか」
 褐色の肌をした少女はなにやらブツブツと考え込んでいる。
 そんな様をテツヤは不思議な気持ちで見つめていた。
 数年ぶりに聞いた母の名。
 その母を目の前の少女は知っているという。


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