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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-65

「…ふん。さあ、帰ろうか」
 リリムレーアは立ち上がると、目の前が真っ暗になるほどの立ち眩みを感じた。
 ヨシュアに血をたっぷり抜かれた上に、術の高速使用。無理も無い。
「大丈夫? リリムさん」
 自身も傷だらけのキョウが肩を貸してくれる。
 キョウ。凄い人間だ。今回、キョウがいなかったら危なかった。
「バカ、お前らふらふらじゃねえか」
 そう言いながら、自身もフラフラのテツヤも支えてくれた。
 テツヤ。私を守ると同時に、殺そうとする存在。その身に伝説の魔人を宿している。
 普通に考えたら危険すぎる。
 でも、私は………。
まあ、普段は少しかわいかったりするのだ。裸だけど。
「テツヤ、キョウ、一応礼だけは言っておく」
 きょとんとした顔でこちらを見る二人。なにが意外なのか。それでも。
「ありがとう」
 そう言いながら微笑むリリムレーアは、どうしようもなく可憐で可愛らしかった。

 廃墟と化した教会。兵どもが夢の跡。
 激闘は過ぎ去り、辺りを薄く照らす月も隠れようとしていた。
 真夜中。草木も眠る時間。
「ぐ……」
 闇の中で、身じろぐ人影。
 跡形も無く消し飛んだはずの五肢が緩やかに再生している。
 ヨシュア・ドラクロワだった。
 吸血鬼の持つ不死性に加えて、竜族の血を浴びた。
 その恩恵か、アシュラの業火を受けても少しずつ再生を繰り返し、人の形を保てるようにまでなった。
「くっくく…」
 自然にその口から笑みが洩れる。
 まだ自分は生きている。チャンスはまだあるのだ。なんとしてもアシュラを、間抜けな吸血鬼族の老人たちを―。
 しゃらん
 響く美しい音。
 しゃらん
「誰だ…」
 音が止まる。
「お久しぶりです」
 不意に立つ背の高い男。
「お、お前は」
 長髪に閉じられた両の瞼。裾の長い法衣に、見事な造りの錫杖。
「ユリアの…」
「朧と申します」
 いつのころからか、ユリアの傍に怪しげな男が張り付くようになった。一族の人間ではない。それなのに、不思議と誰も不満を言わなかった。
「いやあ、見事に負けましたね」
 ふざけた口調。
「この機会を待っていました。極東の島国で大勢の部下を失って負ける。しかも、マグダ姫を奪ったアシュラの末裔である焔一族相手にね」
 しゃらん
「アナタの家督を取り消すには不十分かもしれませんが、それが戦死なら後々都合が良い」
「な、何を言うんだ。僕はまだ生きている! 竜族の血を浴びたんだ。今の僕は無敵さ」
「そうですか。竜の血を。リリムレーアはさぞ痛がったでしょう」
 にこりと笑う朧に、なぜか底知れぬ恐怖を感じた。
「な、何を言ってる。僕はお前の主人の兄だぞ!」
「ユリア様からの伝言です。出来損ないの兄はいらない、と」
 かちん、という音がして朧の持つ錫杖から鈍い光りが洩れる。
 仕込み杖。
「竜は竜にしか殺せない…」
 ヨシュアの顔が恐怖に引きつった。
 朧の目がゆっくりと開かれる。
「待て、待て待て、僕は、ただ妹に、ユリアに、あが、ああああ」
 ヨシュアが最期に見たもの。
 それは金色に輝く朧の瞳だった。

                       可憐に火炎でデッドエンドライブ 了


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