SFな彼女 -Science Fiction編--3
「でえッ!?」
ゴン、と頭に響く衝撃。
取り損ねた煙草が腿に落ち、俺のお気に入りのデニムを焦がす。
「熱ッ!?」
慌てて枕で煙草の火を消して、俺は窓の外を睨みつけた。
まったく、何なんだ――
そして俺は、声を失う。
「……!?」
コンコン、と軽く窓をノックする。
その顔には優しげな笑みを浮かべて。
ちょっと待って下さい? ここ、二階ですけど。
俺は自分の目を疑いながら窓を開けた。
「こんにちはぁ」
「はァ……」
俺は思わず間の抜けた声で返事をする。
いや、だって無理もない。
俺の目の前に立つ、年のころなら二十歳前後の美少女。
目鼻立ちの整った小顔と、出るとこ出た身体つきのその美少女は、俺の断りなくいきなり窓から部屋に入ってきた。
「!?」
真っ白な肌にボリュームある栗色の髪が、ハーフみたいな顔立ちによく似合う。
彼女は笑いながら俺のベッドの前に立ち、傍らにトランクを置いてぺこりとお辞儀した。
俺は狐につままれたような感覚を覚える。
「というわけで」
彼女はそう言って、とびきりの笑顔を浮かべた。
「これからよろしくお願いします!」
「はァ……」
俺はあまりに急なこの展開に、やはり間の抜けた声で答え――
そして、ようやく頭の整理ができたところで素っ頓狂な声を上げた。
「はァ!?」
2. 予期せぬ訪問者
キューブリックの映画に出てきそうな、身体にぴったりとフィットした服は、何かのコスプレだろうか?
というか、どうしてこんな子が俺の部屋に?
しかも窓から?
あれ、ちょっと待ってくれ。この窓に足がかりになるものってなかったような気がするが……。
当然ながら俺の頭は混乱していた。
彼女は胡乱げな俺の視線を受けて再びにっこりと笑い、甲高い声で言った。
「助かりました。あなたのような方がいて!」
「は」
いきなり、何を言い出すかと思えば。
俺は彼女を助けた覚えはないし、それ以前に彼女に見覚えもない。
俺が腕を組んで考え始めると、彼女はくすくすと笑った。
「いえいえ、あなたとは初対面です」
「え?」
「さっき、空に向かって言っていたじゃないですかぁ。同居人が欲しいって」
彼女の答えに、しかし俺の不審は募るばかりだ。
「いや、ちょっと待て待て。君、俺の声聞いてたの?」
うおお、何てこった!
そんなに大きな声で喋ったつもりじゃないのに!
これじゃあ、この子はもちろん周りに住んでいる人達からも変態のレッテルを貼られちまう!
――いや、待て。
俺の声を聞いていたとしたら、どうしてこの子はこんなにフレンドリーなんだ?
俺がどう訊いていいものか考えていると、彼女は顔を赤く染めて恥らうように笑った。