Y先生の憂鬱-4
「…もう、どこにいるのよ」
もう30分も校内を歩き回っているのに、ハルはなかなか見つからない
もう帰ってしまったんだろうか…?
ゆるやかな歩調で校庭に出てぐるりと周りを見渡すと、突然携帯電話が鳴った
…?
「もしもし?」
『もしかして、俺のこと捜してくれてんの?』
ハルの声…
なぜだか胸の中心がきゅっと痛くなる
「ハ…倉本君、今どこにいるの?」
『俺に由希ちゃんが見えてぇ、由希ちゃんに俺が見えないところなんて決まってんじゃん』
「そんなのじゃわからないわよ」
『ふーん…そんなに俺に早く会いたい?』
心のどこかに疚しさがあるから、焦ってしまう
「ち、違っ…話があるから…」
『話以外のことは?』
「なによそれっ」
『分かってるくせに』
「っ…と、とにかく、今どこにいるの?」
電話の向こうでハルが笑う
『しょーがないなぁ…上、見て?』
上?
言われた通りに頭を起こすと、ハルが屋上から手を振っていた
『ほんと、由希ちゃんサイコー面白い』
馬鹿にされているようで、むっとする
「私が行くまでそこにいてよね」
『由希ちゃんが来てくれるなら何年でも待つよ』
だからそういうことを言うなっ!
私は、電話を切って走り出した
***
「可愛い顔で睨んじゃってさぁ」
俺の本気モード、信用してないワケか
それをポケットから取り出して、少し赤みがかった太陽にかざす
「こんなもん、早く捨てたいんだよ…」