トラブルバスターズ01 [二章]-8
「ほぅ!?これは珍しいじゃないか」
ザイードがレイの消え去っていった虚空を見上げて言う。
普通のパワードスーツは飛行することはできないからだ。
ちょっとそこまでブースターで押してという訳にはいかない。
AIの支援があるとはいえ搭乗者の動きをそのままの表わすマスタースレイブ方式と人の形、飛行するには不向きで、どうしても卓越した人の技術が必要になる。
二人が驚いたのも、つかの間、さらにバーニィ続いた。
「じゃ、一勝一敗って事で」
ヘブンの肩の装甲が開き、レイブンとは比べ物にならない大量のマイクロミサイルが飛び出した。
それらは無差別に飛び回り、あるものは再び天井を砕き新たな瓦礫を生み、あるものはザイードやリゴベールの近くに着弾して足元を崩壊させた。
巻き込まれれば普通の人間なら間違いなく再起不能になる程の大惨事だ。
「さぁ撤収よ」
「おう。お家に着くまでが遠足ですっと」
二人は無線機ではなく、わざと拡声器をオンにしてその場を去った。
『行ったのか?』
リゴベールがザイードに聞いた。
『ああ、わざわざ教えてくれているじゃないか。くっくく』ザイードも珍しく機嫌よくそれに応えた。
たまには、噛み応えがある相手は良いなと言いたげに。
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『全帯域の走査完了。現時点で発信器類の反応はありません』
電子音の声が聞こえた。
「うぅ〜ん。あれ、ここは何処?」
周りを見渡しながらマリナは言った。
意識がしっかりした時に知らない景色を見れば、誰しもがこういう疑問に辿り着くだろう。
記憶喪失者なら、私は誰?と本当に付くのだろうか?
「起きたみたいね。エド、みんなを呼んで」
『了解』
「あなたは誰?」
ベッドから身を起し、ミリィに尋ねる。
「安心して、あなたのお兄さんに依頼された者よ」
プシュー
ドアが開き、すぐにラックが入って来た。
「マリナ、大丈夫か」
たかが数週間ぶりといえど、状態が状態だった。
決して広くない車内で駆け寄る。
しかし、兄との距離が縮まるにつれてマリナの顔から血の気が引いて行った。
「ぃや…いやあぁぁーー」
突然、マリナが発狂したように騒ぎ出す。
何事かと、バーニィ達もドアの向こうから覗き込んだ。
二人を見たマリナがさらに叫ぶ。
「嫌あーーぁ!!!」
「二人とも下がって出てこないで。ラックさんも離れて」
「ぇ?」
突然の制止にラックも足を止める。
「下がって」
ミリィの剣幕に押されてラックもおずおずと距離をあける。
トラブルバスターズの男組は姿かたちもない。
「ごめん兄さんでもダメなの。男の人って…だけで怖い……」
実の兄に怯えるような目で言った。
強姦を受けた女性は男性不審…酷ければ男性恐怖症になるという。
「あの男、許せない」
ミリィは同じ女性としてザイードに怒りを感じずにはいられなかった。
続く