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トラブルバスターズ01
【SF 官能小説】

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トラブルバスターズ01[一章]-1

銀河世紀:2030年
世界標準日:八月十九日

来客用ソファーに一人の男が寝転がっていた。
髪をオレンジ色に染め上げた野性的な感じのする男だ。
男が暇を持て余して壁一面を占める窓から外の景色を見つめる。
景色といっても遠い星々の輝きと宇宙の闇以外は何も見出す事は出来ない。
それは当然のだろう…
何故なら此処は宇宙を航行する船の中。
そして、宇宙船ということは言うまでもなく、この船の在る場所は窓に見えるのと同じ宇宙空間だ。
人類が地球という惑星にしか生活していなかったのは遥か昔の話。
あらゆる分野の科学技術の進歩は様々な道具を生み出し、遥か昔の人々がSF(サイエンスフィクション)と呼び夢見た世界は完全と言えないまでも現実に成りつつあった。
残念だが幾多のSF小説に出てきた宇宙船自体が光速度を超える超光速航法は開発されてはいない。
しかし、そんなことで太陽系外への進出という夢を諦める程、一部の人間は素直でも退き際が良い訳でもなかった。
夢追い人達は多くの制限を設ける事でようやく擬似的なワープ手段を手に入れた。
その手段が実用化されてから人類は太陽系の外にまで飛び出していった。
太陽系を脱した多くの国家や大企業は利潤を得るため幾十もの条件を満たした惑星を地球化(テラフォーミング)し、結果として人類の総人口と生活圏はゆっくりとだが着実に増加の一途を辿り続けた。
宇宙進出が始まって2030年…今では星の光だけの光景を手にした人は少なくない。
どの惑星の大地すら見えない、宇宙を押し渡る船からの眺めは距離感すら狂う星だけの景色。
宇宙船が一般化していない時代の人ならばこの星の光景は感動するに違いないだろう。
しかし、人は日常的に見るようになった光景に感動は覚えない。


「だぁー、暇だぁ〜〜!」
窓の外を眺めていた男が暇を持て余して大声で愚痴り始める。
どんなに地球を離れても騒ぐ奴はどこでも騒ぐ。
その男にドアの向こうから白い何かが敵意を持って一直線に飛んでくる。
ゴンッ!!
延々と続くその叫びは誰にも同意されること無く、何かを投げつけられる事で強制的に終わりを迎えた。
「痛って!?」
「バーニィ!五月蝿い!!惑星スキュラに着くまでぐらい静かにしてられないの?」
バーニィと呼ばれた男が何かが飛んで来た方向に振り向くとそこには、仁王立ちする一人の女性がいた。
可憐な美少女と言うには程遠い存在。
しかし、それは醜悪という意味では無く、弱さの欠片も見えない明るさと、かわいいよりも格好いいと言った方が合う容姿の女性だった。
170cmを超える女性としては高い背丈に、整った顔立ち、引き締まった体つき、揺れる黒髪のポニーテイル、澄んだ瞳には常に強い意志が宿っていた。
そうした身体的特徴が彼女の活発さと凛々しさを露わにしていた。
時代が違っていたならば女侍と言ったところだろうか。
この時代に侍や武士はテレビドラマの中を除いて存在しないのだが。
「痛ぇじゃねえか!ミリィ!!その物を投げつける癖いい加減にしろよ」
「頑丈さが取り柄で、大して痛くも無いくせに何を言ってるの」
「そう言う問題じゃないだろ…ってか痛いに決まってるだろ!見てみろアレ」
そう言って、男は投げつけられたマグカップだった物を指差した。
男の頭部に直撃して床に落ちた物は確かに陶器製のマグカップで、今は綺麗に真っ二つに割れていた。
この宇宙を航行する船の中には0.17G程の人工の重力がかかっているが、それで落ちたからと言ってマグカップが割れる事はまずない。


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