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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-13

「…お嬢様?大丈夫ですか?」
「…だ、だいじょぶ…………」

そんな絞るように答えられても、大丈夫なように聞こえないって…。

惣介は屈むように上半身を折り、七香の足をひょいと掬った。
肩をぎゅっと抱きしめ、自分の胸にすっぽりと収める。
執事によるお嬢様のためのお姫様抱っこ―

一度してみたかったんだよな、コレ。

少し優越に浸っている惣介とは反対に、七香は何故自分がこんな体勢になってるのか
わからず、軽いパニックを起こしていた。

「なっ、な、なに…!?」
「足が震えておりましたので…立たせておくべきじゃないと思いました。
お嬢様のお部屋までお連れしたいと思います」
「やっ、だ、だめ。下ろして!…重たいからっ!」

本当はもがいて飛び降りたかったのに、全身の力が硬直することだけに注がれていて、
身じろぎ一つ取れない。

「私が重たそうにしてるように見えますか?楽々と持ち上げたつもりなんですが」
ニコ、と笑って七香の顔を覗き込む。

ああ、もう!ますます自分の力じゃ立てなくなるじゃないっ…!


七香は観念したように、自分の寝室を指差す。
惣介はまるで花束でも持っているかのように坦々と階段を昇る。
寝室のドアノブを指でくいっと下げ、差し込んだ廊下の光を頼りにベッドを見つける。
そこに七香をそっと寝かせると、彼女と目線を同じくして微笑んだ。
傍にあった間接照明をつけ、寝室のドアを閉めに行く。

「…ご気分は悪くありませんか?」

心臓はバクバクいってるし、呼吸だって通常より早い。
顔は熱っぽいし、フラフラする。
こんな状態じゃとても「気分がいい」とは言えなかった。
これもみんな彼のせい…。

―――でも、
もっと近くにきてほしいと思うのは…なんでだろう…。

惣介がベッドの傍らでひざまずくと、人差し指で七香の前髪をそっとかきあげた。

ドキドキが治まらない…。
彼の整った顔がほころぶ度に、自分の心臓が跳ねる。
別に、リビングにあったソファでもよかったのに、寝室の場所を教えてしまった…。
これから何をするのか そう考えたら逃げたくなるほどなのに、
この人にならそうされてもいい…と、気持ちのどこかに覚悟ができていた。

手順なんてわかんない…
でも、きっと大丈夫。この人はそんなこと気にしないハズ。
きっと、痛くも怖くもないようにしてくれるはず…。

大丈夫。きっと―――


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