フニと僕の成長期3-1
僕は犬を飼っています。名前は『フニ』。
フニが我が家の家族になったのは僕が二年生の時、三年前の夏でした。
「ねぇ卯月、お友達に犬飼いたい子いない?」
電話を終えた母が僕に言いました。
「犬?」
「そう、子犬。お母さんのお友達のお友達がね、引っ越しで飼えなくなっちゃったんだって」
「ふーん」
僕はテレビを見ながら少し考えていましたが、なかなかそういったような子は思い浮かばず、考えること自体面倒くさくなってきました。
「ねぇ、お父さんも誰かいない?」
何も言わない僕に望みは薄いと思ったのか、お母さんはターゲットをお父さんに変えます。
「急に言われても。なかなかすぐにはなぁ」
お父さんも黙り込んでしまいました。
考えるのが面倒くさくなった僕に急に一つの考えが浮かびました。
「あのさ、うちで飼っちゃダメなの?」
「うち?お母さんは…いいけど」
なぜかすがるようにお父さんの方を見るお母さん。
「お父さんに聞いてみないと…」
お父さんは口元に手を当て笑いを堪えているみたいでした。
「聞いてみないとって、本当はお前が一番飼いたいんだろ?」
「え、まぁ…」
なるほど。
意図的に僕は飼ったらどうかと言わされたようです。
「う〜ん。簡単に飼うって言っても餌やら散歩やらちゃんと出来んのか?一生は長いんだぞ」
「分かってるわよ。そんなこと」
お母さんはブゥと口をへの字に曲げます。
「卯月はどうだ。しっかり世話出来るか?」
「えっ、僕は…」
そんなこと言われてもただの思いつきで言った一言です。僕は動物なんて飼ったこともないし、あまり触れたこともないし、そんなつもりはありませんでした。
だけど、力強いお父さんの声を前に「うん」と頷く他無かったのです。
「それじゃあ卯月も大きくなったし、飼うか」
「やったぁ〜!すぐに電話掛け直そっと」
どうしてそんなにお母さんがはしゃいでいるのか、その時の僕には分かりませんでした。