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フニと僕の成長記
【家族 その他小説】

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フニと僕の成長期3-2

次の日、僕たちは早速子犬を受け取りに行きました。
確か普通の家だったと思うのですが、今となっては場所も外観も覚えていません。
ただはっきりと覚えているのは、知らない女の人と立ち話をするお父さんとお母さんの姿。それと、瑞々しい緑に輝く芝生の上を、動き回る小さい真っ白な物体でした。
それはコロコロと転がるように走り回り、綿が風に吹かれて動いているかのような、柔らかく時に素早い動きでした。
かと思うと急に動かなくなってコロンと寝転がってみたり、また全速力で走り出したりと自由自在のそれに僕は釘付けになりました。
しばらくボーっと眺めているとそれは走って近付いて来ます。減速無しで僕に突っ込んできて、思った通り僕の足にコツンとぶつかりました。

『ん?ありあり?』

それは僕の足元にちょこんと座り小首を傾げて僕を見上げました。

『だれなんだろ〜?』

フワフワ真っ白の丸い顔。目と鼻だけが黒く光っています。
この子が家に来る子犬。
きょとんとした顔で見つめる子犬に、僕はしゃがんでそっと触れてみました。
子犬が抵抗する様子はありません。それどころか僕の手のひらに顔を擦り寄せて、甘噛みまでしてきました。

『アウ〜』

コロンとお腹を見せて僕の手でじゃれる子犬。
僕は寝転がる子犬を恐る恐る持ち上げてみました。
思ったよりもかなり軽くて驚きました。
僕の不安定な抱きかたでも子犬はおとなしく抱かれています。でも顔だけはキョロキョロと不安げに動いていました。

「ふふ、卯月。そんな抱っこの仕方じゃだめよ」

お母さんが両手で子犬の背中とお尻を包むように、と抱っこの仕方を教えてくれました。
落としたらいやなので、僕はしゃがんだまま言われた通りにします。
フワフワモフモフの毛は温かく、柔らかい体は少し力をいれたら潰れてしまうんじゃないかと思いました。

「卯月の抱っこ上手だから子犬寝そうだぞ」

頭上からお父さんの声が降ってきます。とても小さな声です。
子犬は目をショボショボさせて首をカクンカクンと上下させていました。
手に伝わって来る毛の下の子犬の感触はフワフワというよりは

「この子、何かフニャフニャしてる…」

僕が呟くとお母さんも小さな声で

「それなら、この子の名前はフニャフニャの『フニ』だね」

と言いました。
『フニ』か…。

「っぽいな」

お父さんが笑っています。
僕もそれがいい、とお母さんに言いました。

「じゃあ、フニに決定!あとね卯月、いいこと教えたげよっか」

僕は頷きます。

「フニもね、四月生まれなんだって」

「そうなの?」

僕も四月生まれ、フニも四月生まれ。フニと僕の共通点が見つかっただけでこんなに嬉しくて、フニが家に来ることは初めから決まってたんじゃないかと思ってしまいました。
僕は既に目を瞑ってしまったフニに

「フニ、これからよろしくね」

と小さく呟きました。


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