双子月5〜ふたり〜-5
「なにが違う?もうそんなに濡れてるじゃないか、美月。」
先生が見ている。こんな恥ずかしい姿で感じている私を・・・
美月はもう、快楽に身を預けてしまいたくなっていた。
・・・・・
「じゃあ、藤原さん明日も頑張ってね。」
相談室から出てきた葉月は、一緒に出てきた女性の教師に声をかけられ、軽く会釈して別れた。
葉月は何日前からか、担任の教師とテストのための勉強をしている。
葉月が授業の遅れを取り戻すにはかなりの時間が必要だった。それでもなんとか今回のテストを受けたい。そう担任に相談をしたところ、放課後に勉強を見てくれることになったのだ。
少し前までは学校なんてどうでもいいと思っていた葉月は、テストも真面目に受ける気などなかった。しかし、恋は心境に変化をもたらしたようだ。
拓海に釣り合うような子になりたい。
葉月は最近強くそう思うようになっていた。
拓海と付き合うようになってから、それまであまり知らなかった拓海の素顔をたくさん知った。昼間はたくさんのバイトを掛け持ちして、夜はクラブでDJをさせてもらっている。拓海はそんな生活が楽しくてしょうがないのだという。一人前のDJとしてステージに立ちたいという夢のため、拓海はずっと頑張ってきた。そして、確実にその夢に近づいている。
なんの夢もなく過ごしていた葉月にとって、そんな拓海はキラキラと眩しい存在に感じたのだ。
それから葉月は、自分のやりたいことを探すため、まずはやれるところからやってみようと考えたのだった。
夕日の差し込む廊下を歩きながら、眩しさに目を細める。
校内は人影がなく、静まり返っているせいか、自分の足音だけが響く気がした。
(早く帰ろう・・・)
そう思って、足早に一歩を踏み出そうとした時、視線の先に人影を見た。
(東条?)
白衣姿の東条だった。
保健医の東条がここにいることに違和感を感じ、葉月はなんとなく足音を忍ばせた。
(あいつ、なにしてるだろう?)
葉月はつけてみることにした。
ただなんとなく。
しかし、葉月はなにかを感じとっていたのかもしれない。