ミッション-5
六
『これで、いいんですね。』
健太は車の中を覗き込んだ。
『ああ。』
『大胆ですよね、河島さんも。』
『何が言いたい。』
『だって、自分の親族を殺させるなんて普通しませんもん。』
『口の利き方に気を付けろ。』
河島は銃を出そうとした。
『ああ、分かりましたよ。』
『あいつらは、俺のことをかすだと思っていやがった。身よりのない俺を、キャッチボールのようにお互いに預け合い、挙げ句の果てには孤児院に預けやがった。俺がどんだけ苦しい思いをしてきたか、あいつらに思い知らせてやらなければならなかった。』
『じゃあ、なんで明弘なんですか?』
『あいつはな、そろそろ俺を抜く頃だって部長が言ってたんだよ。だから、いっそのことこいつにさせて、苦しい思いをさせようと思ったんだよ。そしたら、警察に行こうとするからこうなっちゃうんだな。』
河島は笑っていた。あの健太さえもが怯えるほどだ。相当だろう。
『じゃあ、私はこれで。』
『はい。』
河島はそれを最後に去っていった。
河島が去っていったあと、明弘を眺めながら健太は言った。
『すまねぇな、明弘。こんな事にオマエを巻き込んじまって。でもな、安心しろよ。このままじゃ終わらせねぇからさ。あの馬鹿を、苦しめて苦しめて最後にはひねりつぶすからさ。それでかんべんな。』
健太はふっと笑ってその場を去った。