殺人生活-7
六
『英義、話がある。』
向こうを向いていた英義は麗亜の声に振り返った。
『あのな、今日オマエが飲まされたあの薬、実はな………。』
『毒薬だったんだ。』
麗亜がとまどっている最中に、すかさず勇太が言った。しかし、英義はあまり理解できないのか驚いている様子はなかった。
『俺たちが言っていたことは嘘なんだ。ホントはワクチンなんかじゃない、毒薬だったんだ。だけど、あの紙にはオマエには打ち明けちゃダメだって書いてあったから。』
『そんで、その毒薬が途中で治まってきたわけは、人間の肉を食わせたからなんだ。あの毒薬はなんでも人間の肉を食わせると一時的に治まるらしい。だけど、一時的だから永遠に人を殺さなくちゃならないんだ。一回目は俺の母さんだから大丈夫だったけど、これ以上はもう無理なんだ。』
それでも英義は驚いていない。
『だけど、オマエを見捨てるわけじゃない。オマエを病院に連れてって助けてもらうから……。』
そこまで言うと、英義は急に立ち上がった。もちろん、麗亜と勇太は驚いた。今まで、喋ることもままならなかったあの英義が、今こうして普通に立っている。
『もう怖じ気づいちゃったのか。』
英義はあっさりと話した。
『オマエ、しゃべれんのかよ。』
『ああ、普通に話せるさ。ずっと前から。』
『いつからだよ。俺たちをだましてたのは。』
『毒薬飲まされたとこからだよ。あんとき、俺は毒薬なんか飲まされちゃいなかった。自作自演ってやつだよ。』
『何だよ、それ。』
『まだわかんねえのかよ。俺はオマエ達が嫌いなんだ。俺より頭が少しだけいいだけで高飛車になりやがって。オマエ等が消えてくれりゃ俺はあの学校でトップだ。だから、オマエ等を刑務所に送ってやるよ。』
『刑務所！？』
『オマエ等は人を殺したろ。さっき自分で言ったじゃないか、俺の母親を殺したと。だったらそれは犯罪なんじゃないか？捕まるべきなんじゃないか？』
『うるさい！！だったら、二階にあの紙を隠してある。それを警察に突きつければオマエも捕まるはずだ！』
あきれたように笑いながら英義は言った。
『ばかじゃないか？俺がそんなへまするわけないだろ。とっくに捨ててあるさ。』
『な……。』
『俺が見てくる。』
と、勇太が二階に上がっていき、探した。
『ホントだ、無い！！無いぞ！！！』
上から聞こえる怒声に麗亜は驚愕した。
『オマエ、最初からその気でやったのか。』
『そうだよ。』
怒りに満ちた表情の麗亜は、そのままずっと英義をにらみ続けた。すると、やがて勇太が二階から降りてきた。
二人で英義をにらみ続けていた。すると、いつの間にかパトカーの音が。
『やっときたか。』
英義は待ちわびたように言った。やがて、英義の家には警察が。そして、麗亜、勇太の二人を連れて行ったのだった。