命の尊厳〜a short story〜-4
それから数日後、彼は側近達を集めた。
「私が“身体”を無くしてからのひと月あまり、皆の献身的な介護によって私は生き長らえておる。まず、その事で諸君に礼を言いたい」
ジョンイルは側近達に労いの言葉を掛けた。それを聞き、中には感極まって涙を流す側近もいた。
そこまで言うと、ジョンイルは自分の思いを側近にぶつけた。
「ところで、私を生かしてくれている黒い箱の中身を見たいのだが…」
ジョンイルの言葉に、側近達はみるみる蒼白の顔に変わった。
「閣下、装置は非常にデリケートなモノでして中をお見せする訳には……」
拒否しようとする側近達。しかし、ジョンイルも喰い下がる。
「何故じゃ?世界でも実例が無いこのような機械、私は見たいのだ」
ジョンイルの言葉に、側近達は頭を抱えた。
が、
「…仕方ない。閣下のご意向に背くわけにはいかん」
ゲタンと呼ばれる側近の一言で、彼らの考えはまとまった。
「…閣下、何を見ても御心をしっかり保って下さいね」
「……?」
ゲタンの言葉に、ジョンイルは訝しげな表情を見せる。
「何を言っとるんだ?アイツは」
ゲタンは“少々お待ち下さい”と言うとカーテンを閉めた。続くように側近達は、遮蔽板向こうの黒い箱に集まった。
ジョンイルの耳には、金属製の扉を外すガタガタという音だけが聞こえていた。
15分ほど経っただろうか。再び側近達はジョンイルの周りに集まった。
おもむろに、ゲタンがカーテンに手を掛けた。
「…閣下、では開きますよ」
カーテンが勢い良く開いた。途端に、ジョンイルは驚愕の表情を浮かべた。
箱の中には、痩せこけた人間が何人も吊され、その身体のいたる箇所にチューブが繋がれている。
「…あ、あれは…なんだ…」
目を大きく見開き、中身を見つめるジョンイル。
「奴らは、この国の不穏分子です。強制収容所にいる者達のうち、閣下と適性が合致する者を“最後のご奉公”と称して、ここに連れて来られたのです。
生態反応以外は持たぬよう、脳を処理してますから。奴らが動き回ることもありません」
ジョンイルは我が目を疑った。